「新築マンション価格指数」(半期)算出の結果
(3)「新築マンション価格指数」(半期)算出の結果
続いて、(図表-4)に、「新築マンション価格指数」の半期毎の算出結果を示した。
2024年下期の価格指数(2005年上期=100)は「243.4」となり、過去最高を更新した。前期比の変動率を上期・下期に分けて確認すると、2023年上期から3期連続でプラス幅が拡大し、2024年上期には+9%に達したが、下期は+1%にとどまり、価格の上昇スピードは鈍化する結果となった。
(4)新築マンション市場を取り巻く需給環境
次に、東京23区の新築マンション市場を取り巻く需給環境を確認し、2024年の価格上昇要因について考察する。不動産経済研究所によれば、東京23区の新築分譲マンションの新規供給は、2013年をピークに減少傾向が続いている。2024年の新規供給戸数は8,275戸(前年比▲31%)となり、31年ぶり1万戸を下回った。直近のピークである2013年(約2.8万戸)と比較すると、約3割の水準にとどまっている(図表-5)。
建設物価調査会「建築費指数」によれば、東京の「集合住宅(RC造)」の建築費は、構造的な人手不足や資材価格の上昇などを背景に、上昇基調で推移している。特に2021年以降は上昇率が顕著で、2024年は「132」(前年比+7%)となり、直近4年間の上昇率は+26%に達している(図表-6)。
土地総合研究所「不動産業業況等調査」によれば、「住宅・宅地分譲業」における「用地取得件数」の動向指数は、2024年に入りマイナス幅が縮小傾向にあるものの、マイナス圏(取得件数減少)で推移している。不動産投資家の関心が訪日外国人需要に沸くホテル市場に集まる8なか、マンション開発適地が、ホテル開発用地として取得されるケースも増加している9。こうした状況を踏まえると、デベロッパーによる開発用地の取得は引き続き低調な状況にある(図表-7)。
人手不足等に伴う建築コスト上昇や開発用地の不足を背景に、マンションデベロッパーは慎重な供給姿勢を崩しておらず、新築マンションの新規供給は低水準で推移していると考えられる。
続いて、マンション需要に影響を及ぼす人口移動(日本人移動者)を確認する。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2024年の東京23区の「転入者数」は35.7万人(前年比▲0.4%減少)、「転出者数」は31.3万人(同▲2.6%減少)、「転入超過数」は+4.8万人(前年比+14.2%)となった(図表-8)。
東京23区への人口流入は、依然としてコロナ禍前の水準に至っていないものの、着実に回復傾向にある。こうした良好な需給環境を背景に、東京23区の新築マンション価格は上昇基調を維持していると考えられる。
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8 今年1月にニッセイ基礎研究所が国内の不動産実務家等に実施した「不動産市況アンケート」において、「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資セクター(証券化商品含む)」について質問したところ、「ホテル」(73%)との回答が最も多かった。
吉田資『良好な景況感が継続。先行きも楽観的な見方が強まる。~期待はホテルと産業関係施設(データセンターなど)が上位。リスク要因として、国内金利と米国政治・外交への警戒高まる~第21回不動産市況アンケート結果』 (ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート2025年2月4日)
9 日本経済新聞 ビジネスTODAY「首都圏マンション発売5割減 用地争奪、ホテルに敗れる」(2024年9月12日)





