(写真はイメージです/PIXTA)

共働きが増加した現在、年収1,500万円以上の夫がいる家庭のなかで、妻も働いている家庭は6割超といわれています。なかでも昨今注目を浴びているのは、夫婦ともに年収700万円以上の「パワーカップル」や、「パワーカップル」であり子育て世帯である「パワーファミリー」といった存在。本稿では、ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が、消費経済をけん引する彼らの実態と今後の動向について詳しく解説します。

女性の正規雇用者率に伸長の余地あり

また、近年ではパワーカップルの中でも子のいるパワーファミリーが増加しており、2024年には約7割に達していた。具体的な消費の話題については別のレポートで述べる予定だが、すでに不動産や教育、旅行、家具、家電製品といった比較的高額な商品がラインナップされている市場では、パワーカップル・ファミリーは消費のけん引役として注目されており※6、今後も活発な消費が期待される。

 

では、今後、パワーカップルは増えるのだろうか。そして、増えるべきなのだろうか。

 

短期・中期的にはパワーカップル・ファミリーは増加すると考えられる。その理由として、若い世代ほど出産・子育期を含め、キャリア形成に励むことのできる環境が整い、機会も拡大している点が挙げられる。また、40代以下の世代は女性の大学進学率が短大進学率を上回り(図表6)、上の世代と比べて女性も男性と同様に進学先や就職先を選択する機会が増えた世代だ。

 

出所:文部科学省「学校基本調査」
[図表6]大学・短大進学率の推移 出所:文部科学省「学校基本調査」

 

よって、若い世代ほど女性自身のキャリア形成意識も強まっていると見られる。加えて、夫婦ともに育児に積極的に関わろうと考える層が増え、夫も妻のキャリア継続や成長を支援しようとする意識が強まっていると考えられる。

パワーカップル・ファミリー拡大のために

長期的には少子化の影響も無視できないが、現状では大学進学率と比べて正規雇用者率における男女差が大きいことを踏まえると、大半が正規雇用者夫婦と見られるパワーカップル・ファミリーの裾野を広げる余地は十分にある。

 

例えば、大学進学率の男女差は2014年で8.9%pt、2009年で11.7%ptである一方、正規雇用者の割合は25~29歳で11.0%、30~34歳で20.7%の差がある。この状況は女性の管理職比率の向上や男女の賃金格差是正を考える上で大きな課題だ。

 

出所:総務省「令和6年労働力調査」
[図表7]雇用者に占める正規雇用者の割合 出所:総務省「令和6年労働力調査」

 

なお、足元で、大手企業では初任給が大胆に引き上げられ、若手社員を中心に賃上げが進んでいるため、近い将来、夫婦ともに年収700万円以上との本稿における定義を見直す(上げていく)必要もあるだろう。

 

パワーカップルが増えるべきかどうかについては、まず、パワーカップル・ファミリーが増えやすい環境を整えられることが重要だと考えられる。近年の若者のライフコースの希望を見ると、共働きを望む割合が増えており、現在では3割を超えて最も多い選択肢となっている※7。また、女性の生涯賃金を推計すると、正規と非正規では2倍程度の差がある※8

 

共働きをしやすい環境がさらに整い、将来を担う世代の経済基盤が安定することは、個人消費の拡大や日本経済の活性化にも直結する。また、高齢化が一層進み、単身世帯が増加する中では、仕事と生活の両立環境の改善や経済基盤の安定化が図られることは、社会の安定化にも寄与すると考えられる。

 

※5 久我尚子「男性の育休取得の現状(2023年度)-過去最高の30.1%へ、中小や非正規雇用が多い産業でも上昇」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2024/8/15)
※6 「特集-パワーファミリーの研究 年収1500万円世帯、消費の新主役-PROLOGUE-あなたの街にもパワーファミリー 小田原駅前のタワマン完売 子育て環境求め、続々移住」、日経ビジネス(2024/4/29)など。
※7 国立社会保障人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(独身者調査)」によると、女性の理想のライフコースでも男性 
がパートナー望むライフコースでも「両立コース」が上昇傾向で、首位(女性34.0%、男性39.4%)を占める。
※8 久我尚子「大学卒女性の働き方別生涯賃金の推計(令和5年調査より)-正社員で2人出産・育休・時短で2億円超、男性並で3億円超」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2024/10/23)

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年03月24日に公開したレポートを転載したものです。

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