年収1,500万円以上の夫でも62.30%の妻は就業
日本では昔から、夫の収入が高いほど妻の労働力率が下がる傾向が見られてきた(「ダグラス・有沢の法則」)。
あらためて夫の年収階級別に妻の労働力率を見ると、2024年でも、夫の年収が400万円以上では妻の労働力率は低下する傾向がある(図表5)。
とはいえ、夫の年収によらず、全体的に妻の労働力率は上昇しているため、年収1,500万円以上の高収入の夫でも、妻の62.3%は就業しており、10年前と比べて1割以上上昇している(2014年48.8%に対して+13.5%pt)。
出産・子育て期における就業継続の環境が整備され、若い世代ほど共働きが増える中で、夫が高収入であれば専業主婦という、これまでの価値観は弱まっていると見られる。
なお、夫の年収によらず、フルタイムで働く妻も増えており(図表略)、年収1,500万円以上の夫では、2014年から2024年にかけて、週35時間以上就業する妻の割合は14.6%から19.7%(+5.1%pt)へ、世帯数は6万世帯から12万世帯(+6万世帯)へと2倍に増えている。なお、夫の年収が700万円以上の世帯に広げて見ても、妻の労働力率は17.4%から25.0%(+7.6%pt)へ、世帯数は78万世帯から151万世帯(+73万世帯)へと2倍に増えており、このうち約3割がパワーカップルと見られる。
パワーカップルはしばらく増加傾向
本稿では、統計の最新値を用いて、世帯の所得分布やパワーカップル世帯数の動向について分析した。その結果、夫婦ともに年収700万円以上のパワーカップルを含む所得1,200万円以上の世帯は総世帯の約7%を占め、南関東など都市部に多く居住している傾向が見られた。
また、共働き夫婦の年収の関係を分析しところ、夫婦の年収はおおむね比例関係にあり、妻の年収が700万円以上の場合、約7割の世帯で夫の年収も700万円以上であった。一方、相対的に妻の年収が低いほど夫の年収も低くなる傾向があり、過去から指摘されてきた世帯間の経済格差の存在があらためて確認された。
また、近年、パワーカップル世帯数は増加傾向にあり、2024年では45万世帯に達し、過去10年で2倍に増加していた。総世帯に占める割合は約1%、共働き世帯では約3%と限られた層ではあるが、夫婦それぞれでの年収ではなく、世帯年収に広げて見ると100万世帯を超えており、消費市場として一定の魅力を持つ層であると言える。
さらに、夫の年収階級別に妻の労働力率を分析しところ、年収1,500万円以上の高収入の夫であっても妻の6割超が就業しており、その割合は過去10年で1割以上上昇していた。若い世代ほど、出産・子育て期における就業継続の環境が整い、男性の育児休業取得も進んでいることから※5、夫婦ともに子育てをしながら働くという価値観が強まっている。その結果、夫が高収入であれば専業主婦という、これまでの価値観は弱まっているだろう。

