(※写真はイメージです/PIXTA)

ローンの元金返済額が減価償却費を上回ってしまう状態に陥ることを、賃貸経営の世界ではデッドクロスと呼んでいます。この状態に陥ると、資金繰りが悪化する可能性が高く、非常に危険です。今回は、デッドクロスの発生原因や防ぐための方法、解決策について考察していきます。

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デッドクロスが発生する原因

デッドクロスが発生する要因としては、主に2つが挙げられます。1つはローンの返済中に償却期間が終了し、減価償却できなくなること。もう1つはローンの返済が進み、返済額に占める利息の割合が減少することです。

 

減価償却とは、アパートなどの固定資産の取得価格を所定の年数で割り、分割分を毎年計上していく会計処理です。歳月とともに価値が低下していくことを前提とし、その資産を取得した時点で購入費用の全額を計上するのではなく、耐用年数(使用可能であるみなされる年数)で分割して経費として処理を行います。

 

税制上、建物の耐用年数と償却率にはルールがあります。新築の建物の場合、木造や鉄骨造といった構造によって、それぞれ耐用年数が決まっています。この法律で定められている耐用年数を「法定耐用年数」といいます。ただし、法定耐用年数はあくまで減価償却費を計算するためのもので、建物が実際に使用できる期間を表すものではありません。まだまだ使える状態であっても、耐用年数が過ぎると減価償却できなくなるケースも珍しくありません。

 

中古アパートの場合は新築から一定の期間が経過しているため、残った耐用年数を調べる必要があります。残った耐用年数は、すでに法定耐用年数を過ぎている場合は「法定耐用年数の20%」。まだ過ぎていない場合は「法定耐用年数-経過年数+経過年数の20%」になります。

 

いずれにしても、中古アパートの耐用年数は新築よりも短いことは明らかです。耐用年数が短いと短期間で減価償却を進められるため、税制上においても利益を圧縮でき、大きな節税効果を得られますが、その分だけデッドクロスが早く発生しやすいことには注意しましょう。

 

また減価償却費の計算に「定率法」を用いた場合は、償却期間が過ぎていなくてもデッドクロスが発生するケースが出てきます。毎年一定額を計上していく「定額法」に対し、「定率法」は毎年一定割合ずつ計上していくという方法で、年数を経るにつれて償却額が減り、その結果として「ローンの元金返済額>減価償却費」の状態になることがあります。

 

一方、ローンの返済は元金返済額と利息分に分類でき、経費として計上できるのは後者のみです。元金返済額が経費にならないのは、経理処理において融資で得た資金が売上に計上されないことに起因しています。

 

ローンの返済方法には、「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。

 

「元利均等返済」では毎月の返済額は一定ですが、完済が近づくにつれて利息相当額が減少していきます。したがって、返済が進むことに伴い、元金返済額が占める割合が大きくなるので、返済期間が減価償却期間よりも長い期間でローンを組むと、デッドクロスに陥りやすくなるというわけです。

 

「元金均等返済」は月々の返済額に占める元金相当額が一定で、利息分が変動していくという方式です。返済が進むのに伴い利息分が減少していくため、月々の返済額自体も少なくなっていきます。

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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