「ラーメン屋はチェーン化したらまずくなる」日本人特有のバイアスが障害に…「美食の量産」に成功したスペインの一つ星シェフに学ぶ、飲食店経営

「ラーメン屋はチェーン化したらまずくなる」日本人特有のバイアスが障害に…「美食の量産」に成功したスペインの一つ星シェフに学ぶ、飲食店経営
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の飲食業界では、多店舗化に対して「拡大は悪」「多店舗化した店はまずくなる」というバイアスがかかっていることが、成長の阻害要因となっている側面もあるようです。本記事では、らーめんの海外進出を手掛け、就任からわずか十数年で年商15億円から40億円へと事業を成長させた(株)麺食の社長・中原誠氏による著書『日本食GLOBALIZATION 日本食の海外進出に挑む外食企業2代目の勝算』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、多店舗経営でしっかりと成功を収めている世界の飲食業界市場について解説します。

レシピをマニュアル化してノウハウを共有

彼は元シェフですが、そのプロデュースしている店でも実際に自分で料理を続けていました。では料理長なのかと尋ねると「自分が料理長として、みんなに指示を出していたわけではないです。そんな状態で1日1000万円を超えるような体制を作れるはずがありません。少し考えれば分かる話ですが、要はマネジメントなんです」と言いました。

 

マネジメントのポイントは自分がいなくても店が回るシステムを作るだけで、それは決して難しい取り組みではなく、要はレシピを誰でも分かるようなものにして共有することだ、と教えてくれました。レシピこそが財産であり、それをベースにみんなでより良いものにブラッシュアップしていくのです。

 

この話を聞いたとき、スペイン人にはかなわないなと思いました。「レシピをみんなで共有する」といった発想は、フレンチの世界にも日本料理にもありません。

 

分かりやすい例で説明すると、日本料理はいわゆる修業の世界に近いといわれます。今では時流も変わってはきていますが、料理長はいても新しく入ってきた若者に手取り足取り教えることは絶対に行わないのが常でした。とにかく背中を見て覚えろという世界です。

 

フレンチにも近い考え方があり、レシピをマニュアル化したりすれば、自分だけのノウハウを盗まれてしまうリスクがあります。これはAMAZÓNICOの考え方とは正反対になります。 

 

これは良し悪しの話をしているわけではありません。また、国内の日本料理店のやり方をけなしているのかといえば、それもまったく違います。ただ根底にスケール感を考えているかどうかの違いがあるという話です。

 

たとえば、一人の料理長によって差配されている日本料理店の売上が、1日に1000万円を超えることはあり得ませんし、逆にマネジメントによりチームを組んで運営していく店の売上が1日に1000万円を超えることはあり得るのです。

 

ここも誤解してほしくないのですが、1日1000万円の売上を目指せという主張をしているわけではありません。ただ、これまでの日本料理の世界では、そうした発想をする人がいなかったのではないかと私は考えています。

 

おそらく日本食を支えてきた人たちには、想像もつかない話なのだと思います。けれども世界にはそれを現実に達成している店があるのです。つまり、やろうと思えばできないわけではないということです。

 

中原 誠

株式会社麺食 社長

 

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本連載は、2025年4月11日に刊行された中原誠氏の著書『日本食GLOBALIZATION 日本食の海外進出に挑む外食
企業2代目の勝算』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部抜粋・再編集したものです。

日本食GLOBALIZATION

中原 誠

幻冬舎メディアコンサルティング

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