日本に根付く「多店舗化=質の低下」という固定観念
日本の飲食業界では、多店舗化に対して「拡大は悪」という価値観が根強いことや、お客様の頭の中に〝多店舗化した店はまずくなる〟というバイアスがかかっていることが、成長の阻害要因となっている側面もあるようです。
飲食業の経営について身近な例を挙げるなら、ラーメン店の多店舗化問題があります。もちろんチェーン展開して大成功しているところはありますし、私たちも多店舗化していて、さらにグローバルな展開も視野に入れています。
問題が起こりがちなのは、最初に成功したラーメン店がもっと規模を広げてみようといった感覚で店を増やす場合です。このパターンでは、失敗に終わるケースが圧倒的に多いです。2店舗目まではなんとかうまくいっても、3店舗目ぐらいになると、たいてい壁にぶつかりこの壁を打ち破れません。
ではなぜ、うまくいかないのかというと、そもそも多店舗展開を前提としたマネジメントを考えていないからです。
たしかに2店舗目までは1店舗目の延長線上でなんとかなります。最初の店を出したオーナー兼店長兼料理長が、2店舗ぐらいならなんとか一人で掛け持ちしながら面倒を見るのは可能ですが、3店舗となると一人で見て回るのはかなり困難です。何より大切にしなければならないはずの味が変わってしまうからです。
ラーメン店でいうと、スープがこれにあたります。2店舗目までなら最初の店でスープを多めに作って運べますが、3店舗分の量となると、とてもまかないきれません。結局、各店舗でスープを作ることになり、同じ味を保つことが困難になります。
客もその辺の事情を分かっているので当然、評価も厳しめになり「味が変わってしまった」など、辛口のコメントをSNSで流したり、口コミで拡散したりするため、お店は打撃をこうむることになります。
さらには、実際には食べていないのに、店舗が増えたという点だけで、先入観から「味が変わってしまった」と思い込んでしまうお客様もいます。この先入観は、「多店舗化=質の低下」という固定観念に基づくものであり、日本特有の「拡大は悪」という価値観が深く関係しています。
この価値観は、多店舗展開が品質や独自性を犠牲にするものであるという不信感を生み出しており、結果として店舗側の努力が正当に評価されにくい環境を作り出しているのです。
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