(※写真はイメージです/PIXTA)

隣室や外部から室内が見えすぎることで、入居者がプライバシーを侵害されていると感じ、入居者から不満を訴えられるケースは少なくありません。特に古い建物では、構造上の問題から、目隠しを設置することが困難な場合や既存の設備に影響をおよぼす可能性もあります。本記事では、これらのトラブルを未然に防ぐ方法と、起きてしまった場合の対処法について、法律事務所Zの溝口矢弁護士が解説します。

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入居者から不満の声があがったら?

Aさんの事例のようにアパートの入居者から不満の声があがった場合にはどう対処すればよいでしょうか。前述の傾向を踏まえると、構造、位置等から民法第235条第1項の窓等に該当するか、該当するとして目隠し設置を求めることが権利濫用にあたらないかを慎重に検討したうえで、相手方に目隠し設置を求めていくこととなるでしょう。

 

Aさんの事例の場合、まずは、Bさんの建てた戸建ての北側にある窓やベランダの位置や構造等がどのようになっているかを把握することが肝要です。たとえば、Bさんの戸建ての窓やベランダより高い位置にあるAさんのアパートの部屋があれば、その部屋の室内を物理的にいつでも観望できるものではなく、目隠し設置義務は認められないでしょう。

 

他方で、大きな引き違い窓がAさんのアパートの各部屋の南側の窓の真正面にあるような場合には、部屋の室内を物理的にいつでも観望できるとして、目隠し設置義務が認められる可能性が高いといえます。

 

また、Aさんのアパートの各部屋の南側の窓がどれくらいの大きさで、どのような用途であるかも確認する必要があるでしょう。たとえば、常に滞在するリビングに設置された大きな窓であれば、Bさんの戸建てから見られることによりAさんのアパートの入居者のプライバシーに与える影響は比較的大きいといえ、ひいては目隠し設置を求めることが権利濫用にあたる可能性は低くなるでしょう。

 

他方で、収納部屋の換気のために設置された小さな窓であれば、Bさんの戸建てから見られることによりAさんのアパートの入居者のプライバシーに与える影響は比較的小さいといえ、権利濫用にあたる可能性は高くなると予想されます。

日照権侵害の主張はできるか?

本件においては、Aさんのアパートの住人たちは日光が入らなくなったことも問題としています。この場合、日照権の侵害を主張することも理論上は考えられます。

 

しかし建築基準法上、一戸建ての建築に問題がなく、Aさんのアパートの各部屋への日照も一定程度確保されているのであれば、日照権侵害の主張を通すことは容易ではありません(以上と類似の理由で日照権侵害を認めなかった裁判例として、さいたま地方裁判所平成20年1月30日判決(平成17年(ワ)第1489号)参照)。

 

このように、目隠し設置義務は民法で定められていますが、具体的な判断は個別の状況によって異なります。弁護士等の専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。

 

 

溝口 矢氏(法律事務所Z アソシエイト・東京オフィス 弁護士)

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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