アパート経営では、万が一のときのために「相続」について考えておかなければなりません。アパートの相続の際、後悔することのないようにするためには、いくつかのポイントを押さえる必要がありますが、一体どのようなものでしょうか。本記事では、アパート経営の最終局面である「相続」について、法律事務所Zの溝口矢弁護士が解説します。
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事例の反省点
Aさんはこのような子どもたちの争いを防ぐためになにができたでしょうか?
まず遺言書を作成し、Aさんの意思を示しておけば、少なくとも相続の方針そのもので大きな争いが生じることはなかったでしょう。大きなお金が関わると、どんなに関係が良好な家族間でもトラブルになり得ます。遺言書は被相続人であるAさんにしか作れませんから、事前に準備をしておくことが必要であったといえます。
加えて、信託契約(家族信託)の利用も検討する余地がありました。Aさんのケースでは財産のほとんどをアパートが占めており、子どもたちがアパートの共有を望まないことから、現状維持とするか、売却するかの二者択一を迫られるような状況になってしまいました。信託契約を締結していれば、こうした問題を防止できた可能性があります。
また、そもそも財産の大半をアパート1棟の価値が占めており、財産のバランスが偏っていることも問題であったと考えることができます。
たとえば、同じ4,500万円程度の相続財産でも、アパートの価値が1,000万円、預貯金が3,500万円であれば、アパートと預貯金のうち500万円を長女に、残る2人に預貯金1,500万円ずつを分配することができるでしょう。そうすることで、トラブルが生じることなく平等な相続を実現することができたかもしれません。このような意味では、財産のバランス(ポートフォリオ)の調整も重要であるといえます。
以下では、それぞれの対策についてポイントを説明していきます。
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法律事務所Z
東京弁護士会
弁護士
2016年慶應義塾大学法科大学院卒業後、ベンチャー企業でのマーケティング等に関与。弁護士登録と同時に入所した弁護士法人Martial Artsでは、不動産分野、債権回収を中心に多数の一般民事事件や中小企業法務を取り扱った。不動産会社内で企業内法務にも携わる。
知的財産分野に関心があり、エンターテインメント関係の相談対応も手掛けている。
得意分野:不動産、債権回収、一般民事
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