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一部屋30万円の寒冷地仕様のエアコン設置を求められた事例
過去の相談例では、一部屋30万円程度の施工費がかかるような寒冷地仕様のエアコンの設置を賃借人が求めてきたという事案がありました。賃借人が宅建協会の苦情相談窓口にも駆け込みましたが、「特に通常のエアコンが正常に作動していれば問題ない」という回答で沈静化しました。
実際、その地域は寒冷地ではありましたが、少なくともこれまで問題の賃借人以外からは苦情がきたこともなく、契約内容にも特段寒冷地仕様のエアコン設置を定めたわけでもなく、賃借人側の過剰要求だと判断されて終結しました。
法的な判断のポイントとしては、
1.本当に住めないレベルの悪環境になっているのか
2.賃貸借契約の定めでどのような設備を前提にしていたのか
という上記2点を中心に考えていけばよいでしょう。
法的な考え方だけでは収まりきらない「感情面での対立」
常々トラブルというのは、「法的にこうだからこう」という法的な考え方によって、当事者全員が納得するわけではなく、穏当な着地点を考えて対応していくことが重要です。
今回のような「これは過剰要求かな?」と思えるトラブルがあっても、オーナー側でも感情的に反論するだけでは、なかなか早期に決着しません。特に、トラブルが生じると感情面での対立が深まり、ほかの些細な事柄でも逐一トラブルになるような関係性になりかねません。そのため、多少は譲歩した解決案の提示も重要になってきます。
今回のケースでは、一式30万円もする寒冷地仕様のエアコンへの変更工事は断ったものの、代替案として、1~2万円程度の暖房器具を支給して解決を図りました。賃借人の勢いもすごく、宅建協会側の助けもあって終結できたという面もありました。
もっとも、法的にこちらが正しいから、「弁護士に依頼して内容証明郵便を出して自分の正当性を主張する!」というだけでは、余計に対応労力の発生する問題に発展していたかと思います。
筆者としても、今回は法的なジャッジと、譲歩案の調整までをバックアドバイスしただけに留めました。弁護士が前にでなければならないのは、「感情的な対立が深まりすぎて、まともに話し合いができない場合のみです」と、どうしようもないクレーマーにまで発展するまでは、オーナーと管理会社が二人三脚で対応されたほうがよいでしょう、とアドバイスしていました。
トラブル発生時の対応方法
弁護士が言うのもなんですが、片方が弁護士出してくると、対応する側も弁護士を出さざるを得ず、時間と労力の負担が余計に大きくなるケースもありえます。
そのため、トラブル発生時には、①弁護士に早期に相談にいって「見通し・方針」は設定しておいたほうがよいものの、②極力バックアドバイスに留め、譲歩案を先に提案する、③それでもどうしようもない場合は弁護士介入を検討する、という①~③の段階を踏んで考えておくとよいでしょう。
オーナーとしては、トラブルは解決できるだけではダメで、労力を押さえて、早く安く解決する必要がありますから、本件のような実務的な対応方法も参考になると幸いです。
山村 暢彦
一級建築士
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