不動産投資家は土地と建物をどのように区分すべきか?
不動産業者等の売主は、できる限り建物の金額を抑えて、消費税を軽減したいと考えます。一方で、買主である不動産投資家やその資産管理会社は、建物の金額を上げて、減価償却による費用計上の恩恵を受けたいというところで、そこに相反する利害が生じます。
宅地建物取引業法では売買契約書に消費税額を記載することになっていますが、記載していない契約書も少なくありません。そういった場合には、不動産投資家目線で考えると、基本的には固定資産税評価額に基づき按分するのがよいと考えます。
売買契約書に建物の金額や消費税額を掲載する際には、固定資産税評価額に基づき按分するように売主や不動産売買の仲介会社に伝えます。売買契約書に記載された建物の金額が、固定資産税評価額に基づき按分した建物の金額より低くなっているにもかかわらず、買主が高いほうの固定資産税評価額を根拠として申告をすると、訴訟等で問題となった場合には当事者間で合意された契約が尊重される可能性もあります。
一方で、中古の建物の固定資産税評価額については、リフォームや大規模修繕の実施による資産価値の増加が評価額に反映されないことがあったり、また新築時の建物の固定資産税評価額についても、一般的に建物再建築価額の50~70%程度で算定され、築浅物件では固定資産税評価額の建物の比率が低くなっていたりすることがあります。
こういったケースでは、不動産鑑定を行うことで建物の金額を上げることができるかもしれません。
ただし、建物の金額を上げるということは、将来売却する際に、減価償却後の建物の簿価が譲渡原価になるわけで、譲渡利益が計上される可能性を考慮しておかないといけません。不動産鑑定評価による節税効果とコストの比較になろうかと思いますが、個人的には、いずれ譲渡原価として費用計上されるのに、追加でコストをかけて鑑定評価を行う必要性は少ない気がします。
また、不動産鑑定評価を行った場合でも、税務調査等でその不動産鑑定評価が合理的でないと判断されれば、減価償却費を過大に計上しているとみなされる可能性もあります。
税法は複雑であり、状況によって異なります。個々のケースによっては当てはまるとは限りませんので、不動産取得時の税務に関する疑問は、税理士等専門家へ相談することをお勧めします。
川口 誠
MK Real Estate 税理士事務所 税理士
税理士
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