(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、フィデリティ投信株式会社が提供するマーケット情報『マーケットを語らず』から転載したものです。※いかなる目的であれ、当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。

ハワード氏が指摘する「注意点」

次に、気になる点として、次のような点を挙げます。

 

・たとえば、ある企業の株価収益率(PER)が30倍で取引されているということは、その企業が、1.今後数十年にわたってビジネスをつづける、2.その利益はその数十年を通じて成長する、3.競合他社に取って代わられることはない、と投資家が考えていることを意味する。

 

しかし、たとえば、今日のS&P500には、ニフティ・フィフティの約半分しか含まれていない。2000年の初めにS&P500の時価総額トップ20に入っていた企業で、2024年の初めにもまだトップ20に残っていた企業は6社である(→マイクロソフト、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ウォルマート、プロクター・アンド・ギャンブル、エクソン・モービル、ホームデポ)。

 

・一般に、株価の伸びが収益の伸びを上回る状況がつづくと、株価が上昇し続ける可能性は低い(株価はファンダメンタルズに収れんする)。

 

ハワード・マークス氏は「投資家は、企業の利益が年間約7%成長することを忘れると、トラブルに巻き込まれる傾向にある」というウォーレン・バフェット氏の言葉を引用しています(ただし、バフェット氏はマークス氏に「私はそれを言ったことはない」と伝えたそうです)。

 

これらのほかにも、

 

・2022年後半以降、市場に広がっている楽観主義

 

・S&P500のバリュエーションが平均を上回っていること。また、米国株式全体や米国のセクター株式のウェイトが、世界株式全体や世界全体のセクター株式に占めるウェイトが高まっていること

 

・人工知能(A.I.)という新しいものに対する投資家の心理、そしておそらくそのポジティブな心理が他のハイテク分野にまで広がっていること

 

・S&Pの上昇の一部は、インデックス投資家がこれらの株式の本質的な価値を考慮せずに自動的に購入したことに起因している可能性があること

 

を挙げます。

 

いずれも、バブルを示唆するものではないですが、メモでは長期のリターンが低迷する可能性について触れています。

我々にできること

まだまだ、株価は上がるかもしれないし、調整が入るかもしれない現状において、我々にできることは引き続き、

 

・多くの観察を行うこと

・幅広い著名な投資家の話を聞くこと

・時間と資産の分散を行うこと

・銘柄選択(複数のアクティブ・ファンドへの分散)

 

のブレンドでしょう。

 

ハワード・マークス氏やレイ・ダリオ氏のように「失敗から学び、それを繰り返さない」ことは実は容易ではありません。このため、失敗の程度を小さくすることがよいかもしれません。

 

難しいのは、失敗とは下落に遭うことだけでなく、上昇を取り逃がすことでもある点でしょう。

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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