投資家が「向こう見ず」になるワケ
ハワード・マークス氏は、バブルの発生を見極めるには、たとえば、株価収益率(PER)や信用スプレッドといったバリュエーション指標を見るよりも、投資家心理を観察するほうが効果的であると主張します。具体的には、
・「高すぎる株価はない」(=株価はどこまで上がっても不思議ではない)という話が語られるとき
・親しい友人が投資で資産を増やしていて、自分が投資をしていないことを恐れているとき
・これまで投資に関心のなかった人までが金融市場に参加し、投資について「訳知り顔」で語ったり、投資を勧めてくるとき
を挙げます。後者2点は冷静さを失わせ、ファンダメンタルズやバリュエーションを考慮しない投資につながるでしょう。
1点目の「高すぎる価格はない」という心理を生み出すものとして、次の3点を挙げます。すなわち、1.根拠なき熱狂、2.特定の企業群や資産に対する崇拝や信仰、3.「参加しなければ取り残される」という恐怖(FOMO;fear of missing out)です。
また、経済や企業活動でなにが起きているか自体は必ずしも重要ではなく、人々がそれらをどう受け止めているかのほうが重要であるとします。
たとえば、強気相場の最終局面である「第3段階」では、経済ニュースは極めて良好で、企業は収益の大幅増加を報告し、株価はワイルドに上昇して「誰もが物事は永遠によくなるしかない」(Things can only get better.)と考えるとします。
また、こうした状況においては、リーズナブルな価格のものを見つけるのは難しいとも主張します。
なぜ投資家は「非合理な期待」を抱くのか
ハワード・マークス氏は、投資家が非合理な期待を持つ理由として、
1.なにか新しいものが出てきて「歴史がない」状況になり、高いバリュエーションが正当化される
2.勇気を持って「王様は裸だ」という人がいなくなる(⇒弱気な見通しを語って、ひんしゅくを買うことが敬遠される)
の2つを挙げます。あるいは、昨年も起きたように、弱気な見通しを語って会社や業界から追い出されることもあります。
こうして、金融市場からは弱気派が一掃されます。サーキットから障害物がなくなって、観客までもレーシング・カーに乗り込み、誰もがいままでに出したことのないスピードで周回競争をするわけです。