トランプ新政権が誕生
米国で新しい政権が誕生しました。トランプ新大統領は20日の就任演説で、米国民の1, 安全と健康(→国境管理の強化、治安の改善、ヘルスケア・システムの改善などによる)、2, 雇用(→関税の引き上げによる)、そして、3, 自由(→政府検閲の廃止、多様性に関する教育や強制の放棄、グリーン・ニュー・ディール政策の廃棄などによる)を保護することを強調しました。このほかに強調された点のひとつが、インフレの抑制です。トランプ大統領は就任演説で、
「私は、閣僚全員に対し、記録的なインフレを打破し、コストと物価を引き下げるために巨大な力を結集するよう指示します。インフレは、(政府による)巨額の過剰支出と、上昇が続くエネルギー価格によって引き起こされています」
と述べた後、原油とガスの産出拡大や政府効率化省(DOGE)の創設を宣言しました。笑顔を見せる裏側で、トランプ新政権の閣僚たちが「対処すべき課題」と捉えているのは、米国の財政赤字の拡大やインフレであり、それらがもたらす「金利の上昇」であるようです。
J・D・バンス氏の懸念
新副大統領のJ・D・バンス氏は、選挙前に行ったタッカー・カールソン氏とのインタビューで興味深い見解を示しています(→以下は、筆者による抄訳であり、補足も含まれます)。
「本当の戦いは、トランプ氏が大統領になって政策を実行しようとしたときに始まると思います。彼ら(訳注:トランプ氏が大統領になってもらっては困る人たち)は、非常に大がかりな方法でトランプ氏を引きずり下ろそうとするでしょう。そして、そこからが本当の戦いです。そして、それはいくつかの異なる方法で実行されるだろうと私は考えています。
第1に、私たちが不法入国者の国外退去問題で何かを始めた瞬間に起きることを私は心配しています。アメリカには2,500万人の不法滞在者がいます。それは我が国にとって最大の脅威だと我々は考えています。我々は不法滞在者を国外に追い出さなければなりません。
おそらくそのとき、メディアやテクノロジー・セクターからは、これまで見たことのないような反応が起きるでしょう。たとえば、「不法に入国した人々を強制送還するのはファシズムだ」といった反応です。不法滞在者は自国に帰らなければなりません。こうしたやりとりは大きな焦点になるでしょう。私が本当に心配しているもう一つのことは、債券市場です。」
債券市場の負債
「債券市場に関して私が本当に心配しているのは、この国では毎年1.6兆ドルから2兆ドルの新たな負債が政府債務に追加されている点です。
現状でこの債務を持続可能にしているのは、金利がまだかなり低いということです。現在の金利水準は4.5%程度です。もしも金利が8%になり、実際に債務返済に費やす金額が、政府が商品やサービスの購入、インフラに費やす金額よりもはるかに多くなると、この国の財政を破綻させるほどの大きなスパイラルになる可能性があります。
アメリカ合衆国が成立してから、200年超が経ちます。しかし、このようなことは一度もありません。この国で真の債務スパイラルが起こったことは一度もありません。
ですから、債券市場、国際投資家、グローバル化で金持ちになった人々、製造拠点を中国に移転して富を得た人々、多くの戦争で富を得た人々(訳注:トランプ氏が大統領になってもらっては困る人たち)が、債券金利を急上昇させてトランプ政権を倒そうとするのではないかと、私は本当に心配しています。
債券金利の上昇
私がよく考え、トランプ氏ともよく話し合っていることの一つは、財務長官に誰を選ぶかです。もちろん、それは大統領の専権事項ですが、最終的には、本当の危機の時にこの国を管理し、国の財政を軌道に戻すことができる人物を見つけなければなりません。
金利上昇は、彼ら(訳注:トランプ氏が大統領になってもらっては困る人たち)がトランプ氏を倒す方法の一つです。
我々は、彼ら(同上)が取りうる手段について考えなければなりません。彼らは有権者を操作するためにできることはすべてやっています。私はそれがうまくいくとは考えていません。
しかし、我々が勝利する場合も、今後の4年間は、順風満帆とはいかないでしょう。彼ら(同上)は、あらゆる手段を使って、トランプ氏を大統領職から引きずり下ろそうとするでしょう。
金利を急上昇させることが、おそらく彼ら(同上)が、トランプ氏を大統領職から引きずり下ろす最も重要かつ影響力のある方法だと思います。