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久しぶりの帰省を楽しみにしていたはずが…
群馬県で暮らす佐藤美鈴さん(70歳・仮名)と夫の恒夫さん(75歳・仮名)は、長年連れ添った夫婦です。夫婦で受け取る年金は、合わせて月25万円ほど。住宅ローンは完済し、派手な暮らしをするわけでもなく、静かで平穏な日々を送ってきました。その日常が揺らいだのは、年末年始を前にした、何気ない会話がきっかけでした。
東京で働く娘のエリカさん(38歳)は、夫と3歳の子どもと暮らしています。去年の年末年始は夫側の実家で過ごしたため、今年は「美鈴さんたちの家で年越しをしよう」と話がまとまっていました。
久しぶりに会う孫を、美鈴さんも楽しみにしていました。そんな中、エリカさんから一本の電話が入ります。
「おせちは、こっちで用意するね。3万円くらいのものを予約したから、持っていくよ」
思わず、美鈴さんは答えました。
「そんな、悪いわ。毎年作ってるし、今年も私が用意するつもりだから」
するとエリカさんは、少し強めの口調で言ったといいます。
「お正月くらい、ゆっくりしなよ。お母さん、おばあちゃんの世話もあって忙しいでしょ?」
会話の内容を横で聞いていた恒夫さんが口を挟みました。
「おせちなんて、買うもんじゃない。毎年、お前(美鈴さん)が作ってるだろ」
その一言に、空気が一変しました。さらに、娘から「3万円」と聞いた恒夫さんは、声を荒らげます。
「おせちに3万円? 冗談じゃない」「年金暮らしで、そんな金をポンと出せるわけないだろ」
夫婦の収入は年金月25万円。恒夫さんにとって、3万円は決して軽い金額ではありません。月の収入の1割を超える出費に、「贅沢」という感覚が先に立ちました。
しかし、怒ったのは美鈴さんではなく、エリカさんでした。
「じゃあ、お父さんが黒豆を作ったら?」
「おせち代は、私が出すって言ったっじゃん。お母さんには、今年くらいゆっくりしてもらいたいの」
そう言ったあと、エリカさんはこう続けました。
「そんなに“作るのが当たり前”って言うなら、じゃあお父さんが黒豆を作ってみたら?」
黒豆は、ただ煮るだけの料理ではありません。下準備から含めれば2〜3日がかり。火加減も神経を使う、年末の重労働です。
その場で、恒夫さんは言葉を失いました。そして次の瞬間、「お前も、母さんからおせちを教わりなさい。まさか、孫や夫にできあいのものを食べさせる気か」と言い返したのです。エリカさんの怒りは収まりませんでした。
