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家計を知らない35年の専業主婦生活
都内在住の木村美佐子さん(仮名/60歳)は、専業主婦歴35年。大手メーカー勤務の夫(58歳)の年収はピーク時で1,500万円に達していました。
結婚当初から家計管理はすべて夫が担い、子ども2人が独立したあとも、美佐子さんの口座には毎月30万円が振り込まれていました。この30万円は純粋に食費や日用品、美容、交際費など、美佐子さん自身の“変動費だけ”に使える枠でした。
食費は月10万円前後。お米、味噌・醤油・酢・みりんといった調味料も全国から取り寄せ、習い事を頑張って汗をかいた日のおやつは大好物の桐箱入りメロンだった日々。「少し高くてもいいものを使うのが当たり前」という価値観が根づいていました。化粧品はすべてデパコス。友人とのランチは1回5,000円。子どもが独立すれば支出は自然と下がるはずですが、美佐子さんの場合はその逆で、自分に投じる金額はむしろ増え続けていたのです。
夫は時折、不満をにじませていました。
「いまは子どももいないんだから、少しは貯めておいてくれよ」
その言葉に込められた“家計の危機感”に、美佐子さんが気づくことはありませんでした。
そして、60歳の春──。
買い物の前に通帳を確認すると、見慣れた「30万円」がありません。生活費の振込が、止まっていたのです。
「振り込み忘れだろう」と夫にLINEを送っても既読はつかず。不安を抱えたままスーパーで買い物をし、レジに向かうと、家族カードは利用不可。夫が使用停止にしていたのです。慌てて財布を確認すると、手持ちの現金は1万円を切っていました。

