「週末は必ず来る」——可愛いけれど疲れる“おもてなし”
東京都内で夫と2人暮らしをしている島田律子さん(67歳・仮名)。現在は年金が合計月20万円。老後資金としての貯蓄は3,500万円ほど。数字だけ見れば「余裕のある老後」を送っているように見えます。
「息子一家が、毎週末うちに来るんです。孫が本当に可愛くて、一緒にご飯を食べたり、お風呂に入れたり、楽しい時間も多いんです。でも、毎週となると…正直、ちょっと疲れるんですよね」
息子は40代後半で、共働きの妻と小学生の娘(律子さんの孫)との3人暮らし。共働きで平日は忙しく、週末は「娘を遊ばせる場所」として律子さん宅を訪れるのが習慣になっているといいます。
「昼はうちで食べて、夜も…っていうのが続くと、やっぱり食費や光熱費がそれなりに増えるんです。息子たちが何も払わないわけではないけど、『お邪魔します』の感覚のままズルズル来ている感じで…。こっちも“いい顔”しちゃうから、余計に言い出せなくて」
家計としては困っていないはずの律子さんですが、最近では老後資金への不安がじわじわと増してきたといいます。
「この間、新聞で“100歳まで生きるリスク”の記事を読んだんです。私たちの年代って、昔ほど早くは亡くならない。90歳とか100歳まで生きるかもしれないと思うと…3,000万円だって、いつ底をつくかわからないなって」
厚生労働省『簡易生命表(令和6年)』によると、日本人女性の平均寿命は87.13歳。90歳を超えて生きる人も珍しくなくなっています。また、生命保険文化センター『生活保障に関する調査』では、「ゆとりある老後生活費」は月額で約37.9万円とされており、公的年金だけでは足りず、貯蓄を取り崩す必要がある世帯も多いのが現実です。
「月2〜3万円の差ですが、塵も積もれば…って思っちゃうんですよね。光熱費や食費の上昇もあるし、“孫に会いたい”気持ちと、“少しは遠慮して”という気持ちの板挟みです」
