借金の肩代わり。遺留分も放棄させた!
和也さん(55歳・男性)が相談に来られました。和也さんの兄は2歳上で結婚して子供もいますが、その兄のことで困っているといいます。兄は若いころから浪費癖があり、自分のお給料だけでは足りなくなり、親に何度もお金を無心していることを聞いていました。
それだけでなく、消費者ローンで借金をしては返せなくなり、親に請求書が届いて肩代わりすることもありました。そのため、父親は長男である兄に対し、「消費者ローンを返済してやるが、相続のときには渡せるものはない。勘当だ!」と申し渡してきました。父親は兄に対し、家庭裁判所へ遺留分放棄の手続きもさせていました。
兄の浪費癖が治らない
父親は遺言書を作成していて、自宅は同居する次男の和也さんが相続することになっています。兄は父親の財産に対して遺留分放棄もしていますので、大きな問題はなく、手続きはできそうです。
しかし、こうした状況でも兄はお金に困ると母親に泣きついていることを82歳の母親から聞いています。母親は年金や自分の預金から少しずつ渡しているようで、いつまでたっても兄の浪費癖が治らないので、和也さんは困っているといいます。
そしてついに去年のクリスマスイブの夜に兄一家から大迷惑をかけられる事態が発生したのです。去年の12月24日、和也さん夫婦が両親も交えてクリスマスイブの夕食を楽しんでいたところ、勘当された兄一家が家族総出で押しかけてきたのです。
手ぶらで来た兄一家はテーブルの上のご馳走やケーキをまたたく間に食い尽くしていきました。和也さん夫婦と両親は呆気にとられるばかり。兄の妻も高校3年生になる兄の子どもも一緒になって飲み食いする姿を見て、和也さんは「兄貴は実家にいた頃から食い尽くし系だったけれど、今もそうなんだな」とどこか冷静でその光景を見ていたそうです。
しかし、最後にシャンパン1本を飲み干してヘラヘラ笑い「メリークリスマス!」と言った兄に、今までお金をせびられてきた母親がついに爆発。「うちはクリスチャンになった覚えはないよ!とっとと出ていきな」と塩をまきながら兄一家を家から追い出すという修羅場がありました。
というわけで、兄一家は完全に出禁状態になったのですが、何をしでかすかわからない兄に和也さんも妻も怯えており、相談に来たというわけです。
夫婦の財産は1億3,000万円
さて、和也さん夫婦は両親と同居していますが、子どもはおらず、夫婦ともにずっと仕事をしてきました。和也さんの妻も和也さんも公務員で安定した職場にいるため、ある程度の預金があります。和也さんは同居する前に購入した家があり、現在は賃貸に出しています。また妻も親から相続した家があり、それも賃貸に出しています。
二人の財産を合わせると2軒の家と預金で1億3,000万円ほどになります。お互いに配偶者ですので1億6,000万円までは特例により相続税の納税は不要ですが、問題は相続人にあの兄が関係するということです。子どもがいない場合、親が健在であれば親が相続人ですが、親が亡くなっている場合は兄が相続人となり4分の1の権利となります。
兄を排除したい
和也さんは。今までの親に対する兄の言動、親の財産は充分に渡していると言えることや和也さん夫婦の財産形成に兄が貢献してきたことはないため、兄に財産を分けるつもりは一切ありません。クリスマスイブの大騒動でその思いをより一層強くしました。
そこで、自分たち夫婦の相続では兄が相続人となることがないようにするための遺言書をお勧めしました。夫婦ともに「全財産を配偶者に相続させる」という内容の遺言書を作成しておくことで、兄が相続する権利を排除できます。兄弟姉妹には遺留分の請求権がないため、遺言書があれば兄の相続人の立場を排除できるのです。
内容はシンプル
遺言書の内容はシンプルでよく、財産の詳細を書かなくても「全財産」という表現で作成できます。また、互いに「配偶者に相続させる」という文言でいいのです。間違いのない公正証書遺言がおススメで、当社でお二人の証人をお引き受けすることで遺言書ができあがりました。これで安心と和也さんご夫婦は一安心されたのでした。
今年は和也さん一家が、家族で平和なクリスマスイブを迎えられることを願っています。
◆相続実務士のアドバイス
●できる対策
夫婦で遺言書を作成する。
「配偶者に全財産を相続させる」という文言でよい。
●注意ポイント
兄弟姉妹には遺留分の請求権がないため、兄は請求してくることはない。
遺言書が必須なので、早めに作成しておくことが望ましい。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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