実家の預金管理を任せていた兄弟によって、知らぬ間に親のお金を使い込まれていた、というケースがあります。お金が引き出されたことが分かっても、本人がそれを認めない限りは、追及は難しく、歯がゆい思いをするかもしれません。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、こういったケースの場合に、できる対策について詳しく解説します。
母親は施設に
58歳の真治さん(男性)からのご相談です。
真治さんの母親は93歳までひとり暮らしをしていましたが、いよいよ大変になり、施設に入所しました。現在96歳になります。父親は20年も前に亡くなっています。
実家へは2時間ほどかかる真治さんとは違い、5歳下の弟が実家のすぐ近くに住んでいますので、母親のお金の管理も含めて、弟家族が母親の面倒をみるようにしていたといいます。
お金の管理は弟が
母親は90歳を過ぎても「どこも悪いところがない」と話しており、とても元気でした。ずっと家で生活するだろうと思っていましたが、母親が施設に入所したと弟からの事後報告で知らされて本当に驚いたといいます。弟は事前に真治さんには相談もなく、決めてしまったのです。施設の費用なども気になるところですので、弟に聞いたところ、足りているので心配ないと。通帳の管理もきちんとしているという返事でした。
母親に仕送りしていた
真治さんは母親の生活費は確認していなかったのですが、母親から「年金では足りない」と言われて毎月10万円から15万円を仕送りしていました。専業主婦の母親の年金は少ないので自分が仕送りするのは当然だと思ってきたのです。
ところが、最近になり叔母から聞いてわかったことは、母親は父親の遺族年金があり、困ることはないという話を叔母にはしていたようです。父親の遺族年金と母親の年金は2ヵ月で約34万円だとわかりました。母親ひとりでは困ることはないと思えます。
いずれにしても事実を確認しておきたいと思い、弟に通帳を見せるように言いましたが、なかなか見せようとはしません。問い詰めると通帳は捨てたという説明。母親に聞いてもわからないといいます。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続のプロが解説!人生100年時代「生前対策」のアドバイス事例