資産家の父のもとから資産家一家に嫁いだ娘
75歳になるAさんは、関西地方在住で、老舗企業の会長をしています。会長をしているといっても、経営権は息子に譲っており、Aさん自身はロータリークラブや法人会などの会合や趣味のゴルフなどを楽しんで過ごしていました。
Aさんは3代目社長として後継ぎをしており、代々、会社を守ってきたので、地元にも古くからの知り合いがたくさんいます。これまでは会社経営で忙しくしてきましたが、ようやく友人とゴルフや旅行に行くなど楽しむ時間がとれるようになりました。
Aさんには息子と娘がいるのですが、娘は有名女子大学を卒業してすぐに結婚し、夫の転勤で東京に住んでいました。大学も遠方だったため、実家からではなく下宿をして通学していました。そのため、Aさんにとっては、娘がお盆やお正月に帰省してくれるのを毎年心から楽しみにしていたのです。
待望の初孫誕生
そんなある日、娘に待望の赤ちゃんが生まれました。Aさんにとっては、ずっと楽しみにしていた初孫です。大事な娘の子供と思えば思うほど、本当に可愛くて仕方がありません。そして、自分が父親だったときは会社経営に忙しく、娘や息子の育児は妻に任せており、子供との時間が十分に取れなかったという後悔もあり、孫には最大限のことをしてあげたいという気持ちが芽生えていました。
お盆やお正月の帰省がさらに待ち遠しく、会う度にすくすくと成長している孫がとんでもなく可愛く、幸せな日々を過ごしていました。そんなとき、何気なく話していた会話で、娘の嫁ぎ先の舅が孫に教育資金の贈与を1,500万円したということを聞きました。
Aさんの孫は、舅にとっても初孫です。娘の嫁ぎ先は資産家で、婚約するときも娘が惨めな思いをしないようにと、Aさんとしても最大限のことをしてきました。大事な孫と娘のことを考えると、こちらとしても黙ってはいられないと思うように。そこで、Aさんも同じように贈与をしようと考えました。
娘の舅に負けてられない!秘密裏に始めた貯金
Aさんは妻と相談をして、いつも懇意にしている近所の銀行に孫の通帳を作ることにしました。親身になってくれた銀行員のアドバイスのもと、定期的にAさんの口座から孫の通帳に振込をして、貯めていくということを始めたのです。
娘に話そうとしましたが、娘は親に迷惑をかけたくないという気持ちがとても強いので、もしそういったことを言うと絶対に遠慮して断るだろうと思いました。そのため、娘には話さず、いざというときに助けてあげられるように貯めるというかたちをとりました。
Aさん死去
そうして何年も経過したある日、Aさんが亡くなり、相続が発生しました。Aさんが所有している財産は会社の株式をはじめ、いろいろな資産があったため相続税の申告はとても大変でAさんの妻は資料収集に奔走しました。もともと、Aさんは遺書も準備していたのでそのとおりに申告を進めました。
Aさんはとてもきっちりした性格なので妻や子供が困らないように、自分が亡くなったあとのことまでよく考えてくれていたのです。そんなAさんの愛情に妻も息子も娘も涙があふれてとまりませんでした。
そうこうしていたある日、税務調査がきました。「なにか問題があるのか?」妻も息子も娘も見当がつかなかったのですが、思ってもいないことを指摘されました。なんと、孫のために貯めていた預金が相続財産だという指摘を受けたのでした。
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