(※写真はイメージです/PIXTA)

4年連続で税収の過去最高値を更新し続けている日本。重い税負担に耐えかねて、税率の低い国への移住を考える人も少なくないでしょう。しかしながら、安易な海外移住は後悔に繋がることも……。本記事では、実際にシンガポールへと移住したフリーのエンジニアであるAさんの事例とともに、海外移住と税制の注意点について、木戸真智子税理士が解説します。※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

シンガポール移住を決意したワケ

シンガポール在住のAさん(現在50代)は、フルリモートで働くエンジニア。現在は外注で仕事を請け負っています。もともとは日本で会社勤めをしていたのですが、時間の制約が非常に多く、遅くまでの残業がほとんどだったため、退職者もあとを絶たない職場でした。

 

Aさんは当時の職場に長く勤めていたため、責任者として部下を取りまとめる立場にありましたが、部下が急に辞めたり、休んだりすることへの対応に追われ、尋常ではないストレスがかかる日々を送っていました。

 

唯一のメリットは、給与の待遇がとてもよかったということ。しかし、その代償はあまりにも大きく、子どもが小さいときには父親らしいことも満足にできない状況でした。

 

そんな日々を過ごすなか、Aさんも「自分が年老いてもこの仕事を続けられるだろうか……」という不安がよぎり、転職を考えるように。結果、転職という形ではなく、以前の同僚が誘ってくれたフルリモートでの業務委託という形で個人事業主として再スタートを切ります。

 

働く時間も自由、そして、仕事をする場所も自由……というこれまでと真逆の環境になったAさんは、これまでの反動かのように、自由を謳歌して、株式投資や不動産投資なども行うようになりました。株式投資と不動産投資の収入を合わせると、現収入は退職前をはるかに上回るようになりました。そして、学生時代から密かに憧れていた「海外に住みたい」という気持ちが日に日に大きくなり、移住を本格的に考えるようになります。

 

そこで、Aさんが一番に候補として思い浮かべたのはシンガポールでした。シンガポールにAさんが初めて行ったのは、中学生のときでした。私立の学校だったため、修学旅行は海外で、行先はシンガポールでした。実はAさんにとってはこのシンガポールが、生まれて初めての海外旅行だったため、そのときの感動はいまでも鮮明に覚えています。

 

それだけに、海外にまた行くのなら、もしも移住するのなら、やはりシンガポールだとAさんは確信したのでした。

 

税制面でも有利なシンガポール

調べてみると、シンガポールは税制面でもメリットがあるということがわかりました。フリーランスとして働き始めてから、納税の負担額にいつも頭を悩ませていたAさんにとって、これは嬉しい情報です。

 

個人事業なので自分一人ですし、日本では自宅でフルリモートできることから、使える経費がなく、収入のほとんどが所得となり、所得税率も高い税率になってしまっていました。定期的にくる、所得税、消費税、住民税、事業税の税負担をどうにかできないものかと考えていたのです。

 

シンガポールでは、そもそも日本より税率が低く、同じような累進課税であっても最高税率は日本の半分ほどということもわかりました。「これは移住しかない。海外移住なんて、夢のようではないか」と、はやる気持ちをとめられませんでした。

 

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