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相続財産が不動産ばかりで現預金が少ない、もしくは遺産分割がまとまらず預金が凍結されたままである。そういった理由で相続税の申告期限までに相続税が払えないというとき、どうすればいいのでしょうか。税理士が解説します。

相続財産の中に相続税を支払うだけの現預金がない

相続財産の中に相続税を支払うだけの現預金や、すぐに換金できる金融商品がない場合の対処方法を以下で3つ紹介します。

 

相続税を分割で支払う「延納」

延納は、相続税を一括で払うことができない場合に、最大約20年に渡って分割払いできる制度です。相続した財産を手放したくない場合に利用を検討すると良いでしょう。

 

ただし、延納が認められるためには次のような要件があります。

 

1.相続税額が10万円を超えていること

2.金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること

3.「延納申請書」及び「担保提供関係書類」を期限までに提出すること

4.延納税額に相当する担保を提供すること

 

2については、例えば、相続人が個人的に金融資産を所持しておりそれを使えば納税が完了できるようなケースでは要件を充たすことにはなりません。また、延納をするときには、4にあるように担保を提供する必要があります(ただし、延納した税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下である場合は不要です)。延納が認められれば、延納した税額を延納期間で割った金額を、毎年1回支払います。延納した税額には利子税が課税されます。

 

相続税を土地等のモノで納める「物納」

物納は、現預金ではなく、相続した不動産などを直接相続税として納めることができるという制度です。延納で分割しても相続税を納めることが困難な場合に利用されることがあります。物納できる財産は被相続人から相続したものに限られ、相続人がもともと保有していた財産を物納することはできません。また、被相続人から相続したものであれば何でもよいわけではなく、物納できる財産には一定の範囲が定められています。

 

物納するときに注意すべき点は、物納で納める財産は相続税評価額で評価されるという点です。不動産であれば、時価より低い金額で評価されます。また、小規模宅地等の評価減の特例を適用した宅地は、評価額を減額した後の金額で評価されます。小規模宅地等の評価減の特例を適用した宅地は、物納するより、宅地を時価で売却して現金で納税するほうが得策です。

 

上記のように物納は認められるためのハードルも高く、相続財産を売却して現金で納税する方が税額的には抑えられるケースも多いため、利用する際には慎重な検討が必要です。

 

相続財産を売却し現金化して相続税を納める

相続財産の中に相続税を納めるだけの現預金がない場合、相続財産自体を売却して納税に充てるという方法があります。相続税の申告期限までに売却手続きを行い換金すれば、この方法をとることは可能です。まだ相続税を納めていない段階でその相続財産を売却してしまっても良いのかと思われる方もいるかもしれませんが、まったく問題ありません。ただし、売却を検討している相続財産について、相続人の間で遺産分割が完了している必要はあります。

 

一般的にこのような場合に売却されるのは、相続した家や土地などの不動産であることが多いです。以下に、納税資金捻出のために相続不動産を売却する場合の注意点について解説します。

 

●不動産を売却する前に

不動産を売却するには、まず、不動産を売却できる状態にしなければなりません。物件を手入れすることはもちろんですが、手続きとしては、不動産の名義を相続人のものに変更することが必要です。相続による不動産の名義の変更は相続登記といい、その不動産がある場所を管轄する法務局で手続きをすることができます。もし、不動産に抵当権などの権利が付けられているのであれば、それらを抹消する手続きも必要になります。

 

●不動産を売却する

売却の準備が整ったら、相続税の納税期限に間に合わせるためにもできるだけ早く不動産業者に売却を持ち掛けましょう。不動産は、立地条件によっては、なかなか買い手がつかないこともあります。売却を急ぐと、不利な条件で売却することになります。有利な条件で売却するためには、できるだけ早く売却を始めることが大切です。

 

ただし不動産の売却によって譲渡所得税という相続税とは違う税金がかかる場合もあります。売却時にかかる税金も考慮し、手取りを計算して納税資金を検討する必要があります。相続税の取得費加算の特例という譲渡税を低くするための特例も設けられていますので、併せて利用を検討するとよいでしょう。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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