(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の暮らし方が多様化する中、「暖かい国でゆっくり暮らしたい」と海外移住を考える人は少なくありません。物価の安さや気候の良さ、日本より広い住環境に魅力を感じるケースも多く、近年は“海外リタイア生活”を紹介する動画や記事も増えています。しかし、実際の生活には、言語、医療、ビザ、孤独感など、観光では見えにくい現実もあります。

「のんびり暮らしたい」65歳夫婦が選んだ海外移住

辰典さん(仮名)と妻の洋子さん(仮名)は、3年前、東南アジアのある国へ移住しました。

 

辰典さんはメーカーを65歳で定年退職し、退職金と貯蓄を合わせて約3,000万円を保有。夫婦の年金受給額は、合わせて月23万円ほどになる見込みでした。

 

「日本で節約しながら暮らすより、暖かい国でゆっくりしたいと思ったんです」

 

移住のきっかけは、定年前に訪れた旅行でした。

 

海沿いの街、温暖な気候、日本より安い外食費。現地には日本人コミュニティもあり、「ここなら老後を楽しめそうだ」と感じたといいます。

 

夫婦は日本の自宅を売却し、現地で長期滞在用のコンドミニアムを賃貸契約しました。

 

最初の生活は、まさに理想通りでした。朝は海辺を散歩し、昼は現地の食堂で食事。日本では高く感じていた外食も気軽に楽しめます。

 

現地の日本人とも交流ができ、移住直後は不安より期待のほうが大きかったといいます。

 

「日本にいた頃より、自由になれた気がしました」

 

実際、住居費や食費は日本より安く、当初は「これなら余裕を持って暮らせる」と考えていました。

 

国土交通省『住宅市場動向調査』では、住み替え時には住宅価格や広さだけでなく、交通の利便性や周辺環境を重視する人がいることが示されています。老後の住まいは、住居費だけでなく、日々の暮らしやすさを含めて考える必要があります。なかでも夫婦にとって大きかったのが、医療への不安です。

 

辰典さんが体調を崩して現地の病院を受診した際、言葉の壁に直面します。通訳サービスはありましたが、日本のように細かな説明が通じず、不安が強まったといいます。

 

さらに、日本の健康保険のような感覚で医療を受けられるわけではなく、私立病院では高額な費用がかかるケースもありました。

 

外務省も、海外渡航・滞在者向けに、現地の医療制度や保険内容の確認を呼びかけています。海外では、日本と医療費や受診環境が異なるケースも多く、長期滞在では事前の備えが重要になります。

 

加えて、為替変動も家計に影響しました。年金収入は日本円。円安が進むと、現地での生活コストは想定以上に上がっていったのです。

 

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