ある男性は、母親の相続に強い懸念を抱いていました。不動産は共有名義で、空室が目立つ築古のアパートがあり、そしてそこには引きこもりとなった姉が暮らしていて…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。
3つの不動産、いずれも「母親+子ども」の共有名義に…
今回の相談者は、50代会社員の山田さんです。80代の母親の相続対策について悩んでいると、筆者の事務所を訪れました。
「母も高齢となり、相続の心配が出てきたのですが、じつは不動産の権利関係がややこしくて…」
7年前に亡くなった山田さんの父親は、預貯金のほか、自宅・アパート・駐車場の3つの不動産を所有していました。預貯金は母親が相続しましたが、不動産は、母親と子どもたちの共有になっています。
山田さんの家族構成と不動産の権利関係は、下記のようになっています。
●家族構成
母親(80歳)
長女(56歳)未婚、無職、アパートの一室に居住
長男(52歳)母親と同居、会社員、妻と子ども2人あり(相談者)
二女(50歳)隣県に在住、会社員、夫と子ども2人あり
●不動産の共有状況
自宅:母親+長男
アパート:母親+長男+二女
貸駐車場:母親+長女
山田さんは、母親の相続が発生したら、不動産の共有が問題になると考えているほか、築40年近いアパートも、半分が空室になっているなどの問題があり、不安を抱いています。
不動産の共有+築古アパート+引きこもりの姉
山田さんの資産についての悩みをまとめると、下記のようになります。
①相続税額が不安
②母親と妹との3人の共有名義のアパートどうすべきか悩んでいる
③不動産会社から老朽化したアパートの建て替えを勧められ、迷っている
一方で、家族関係についての懸念点もあります。
①独身で無職の姉のサポートはできる範囲でするつもりだが、自分の家族に負担はかけられないと考えている。
②隣県在住の妹はすべてに非協力的で、不満をもっている。だが、揉めるのは得策ではないと考えている。
「もしこの状況で、母に万一のことがあったら、一体どうなってしまうのでしょう? 相続したら恐ろしくて、いてもたってもいられません…」
不安を洗いざらい話し終えた山田さんは、頭を抱えました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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