地主を取り巻く社会経済環境は年々厳しくなりつつあります。地主の相続対策における最大の課題は「相続税」ですが、特に平成25年の相続税の改正や、令和6年のタワーマンションの税改正は、多くの地主が危機感を覚えたことでしょう。本記事では、地主に関わる相続税の現状について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。
年々厳しくなる…地主の「相続税」の現状
地主が最も重視する税金の一丁目一番地といえば、「相続税」である。
地主の次世代への承継において、対策の多くは相続税の対策であり、円滑な承継を実現するためには相続税についての理解が不可欠である。また、相続はいつ発生するか予測困難であり、対策の途中で相続が発生するケースも少なくない。したがって、焦って実施するものではなく余裕を持った対策が必要である。
図表1のとおり、令和3年時点の課税件数割合は「9.3%」であり、課税資産に占める納税割合は「13.1%」である。平成27年に大きく課税件数の割合が増加しており、これは平成25年の相続税改正による影響である(適用は平成27年1月1日)。税改正により従来の税制であれば納税不要であったものが、改正により納税の必要が生じている。
また、相続税は平成初期からは下落傾向であったが、平成22年に底を打ち、その後は右肩上がりとなっている。現在ではバブル期のころと同程度の水準である。
国税庁が公表している申告書ベースの各資産の内訳は図表2のとおりであり、「土地」以外の資産がこの10年ほどでおおむね倍増している。また家屋も平成27年以降、増加傾向であり、相続対策による建物の建築が窺える。したがって土地の増加率にくらべて家屋の増加率が顕著といえる。
令和3年時点の国税庁公表の数字から内訳比率を算出したのが図表3であり、土地および家屋を「不動産」としてまとめると、相続における約4割が不動産となっており、その額は7兆5,000億円ほどである。近年では毎年7兆円前後の不動産が相続の対象となっている。
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ティー・コンサル株式会社
代表取締役
不動産鑑定士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
1978年東京都出身。中央大学経済学部卒。
大学卒業後、不動産鑑定業者にて鑑定業務、不動産ファンドビジネスに従事。その後、金融の視点から不動産の価格形成を理解するため銀行(三井住友銀行)へ転職。融資業務、与信管理業務、アセットマネジメント業務(出向先にて)に従事したのち、個人富裕層向けコンサルティング業務に従事。アパートローン融資、資金運用、税金対策、遺言作成など承継対策業務を幅広く経験。その後、横浜銀行に転じ本部所属のうえ担当地区内のコンサルティング能力向上、富裕層取引の拡大などで貢献し頭取表彰も受賞。2022年にティー・コンサル株式会社を創業。金融に精通した不動産専門家として、多くの資産家(地主・経営者)や専門家(弁護士・税理士)からの相談を受けオーダーメイド型の問題解決を行っている。また、不動産鑑定士として銀行、税理士、上場企業などから依頼を受け不動産評価にも取り組んでいる。
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連載「メガ・大手地銀出身の不動産鑑定士」だから語れる…アパートローンの最新事情と銀行の舞台裏