(※画像はイメージです/PIXTA)

地主を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。地主業を続けていると、今後も増税や人口減少といった、大きな壁に直面する機会が多々あるでしょう。本記事では、地主業の維持に迫るリスクと対処法について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

1.税改正による影響が大きい

地主として不動産事業を営むにあたっては(以下「地主業」という)税金による影響が大きい。一般的には地主が支払う税金といえば、「相続税」というイメージが強いが、不動産を所有していることに関連して、以下のような税金も支払っている(赤枠箇所)。

 

出所:財務省「税の種類に関する資料」
[図表1]国税・地方税の税目・内訳 出所:財務省「税の種類に関する資料」※1

 

不動産に関連してかかる税金を整理すると、以下のとおりである。

 

【所有期間中】
固定資産税、都市計画税、(用途によっては)消費税

【一時的】(不動産購入)
不動産取得税、登録免許税、印紙税、不動産取得税、消費税(銀行借入)、印紙税、登録免許税、消費税(銀行手数料などにかかるもの)

 

また、不動産事業において利益が出ていれば所得税や法人税、住民税や事業税などもかかり多種多様な税金との関わりが強い。

 

したがって、税改正による増税があれば不動産事業や承継において大きな支障が生じる。平成25年度の相続税改正(適用は平成27年1月1日以降)は、近年における地主を取り巻く税改正の代表的な事例といえる。

2.人口動態の影響も受けやすい

日本における人口は平成20年にピーク(1億2,808万人)を迎え、その後減少に転じている。

 

2050年代には人口は1億人程度になるものと推測される(図表2参照)。ほかの経済予測などと比べて人口動態は将来予測を行いやすいといわれることから、おおむね予測どおりの結果になるものと思われる。ここ数年は全国平均で0.5%程度減少している。一方で、東京都については人口が増加しており、その周辺地域においても下落率は緩やかである。

 

地主業においては、不動産賃貸収入にて事業を行っていることから人口動態による影響を受けやすい。

 

建物を建築する以上、長期的に建物からの収入を維持できる状況を目指さなければならず、「建物を建築して終わり」あるいは「不動産を購入して終わり」ではなく将来的な賃料収入の確保についても検討することが肝要だ。

 

ただし、地方都市であるからといって、一律不動産事業が駄目であるということではなく、各地域によって事情は大きく異なることから日ごろから不動産についての情報収集や分析が大切だ。

 

また、リスク分散の観点から地元以外に不動産を購入するということも選択肢としては有効であると思われる。

 

出所:国立社会保障・人口問題研究所「図1-1 総人口の推移 ―出生中位・高位・低位(死亡中位)推計―」※2
[図表2]総人口の推移 ―出生中位・高位・低位(死亡中位)推計― 出所:国立社会保障・人口問題研究所「図1-1 総人口の推移 ―出生中位・高位・低位(死亡中位)推計―」※2

 

注)人口増減率は、前年10月から当年9月までの人口増減数を前年人口(期首人口)で除したもの 出所:総務省統計局「男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級)※3
[図表3]総人口の人口増減数及び人口増減率の推移(1950年~2023年) 注)人口増減率は、前年10月から当年9月までの人口増減数を前年人口(期首人口)で除したもの
出所:総務省統計局「男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級)※3

 

出所:総務省統計局「男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級)※4
[図表4]都道府県別人口増減率 出所:総務省統計局「男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級)※3

 

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