50歳でのセミリタイアを目指して資産形成も、道半ばで…
外資系企業で働いていたAさんは50歳になったらセミリタイアをする目標に向け、35歳のときから資産形成を進めていました。
Aさんの職場は業績に応じて年収が上がるものの、残業も多かったために、50歳になってもいまのようなワークスタイルを維持していくことに体力的な厳しさを感じていたのです。また、プライベートの時間を持ちたいという気持ちもありました。
セミリタイア後は、これまでの経験を活かして、経営コンサルタントの仕事をしようと考えていました。想定している稼働日数は、週の半分くらいです。金融の分野にも強いAさんは、思い描く未来を実現するために、資産形成を計画的に行っていました。
年齢とともに、職場での立ち位置も責任のあるポストになり、なかなか退職のタイミングを見つけられないAさん。気づけば53歳を迎えていました。
ようやく子供も大学を卒業して、社会人になった今年こそ、退職してあらたなライフステージへ……と考えていた矢先に、Aさんは職場で倒れて亡くなってしまったのです。
あまりに突然のことで、専業主婦をしていたAさんの妻も、なにが起きたのかわからないまま、周りの方々の励ましや協力により、お葬式や相続の手続きが進められていきました。
退職したら、ずっと行けなかった長期の海外旅行の予定を立てていましたが、それももう叶いません。いろいろとこれからというときにAさんを失い、家族はとてもやり切れない気持ちで数年を過ごしていたことでしょう。
そんなある日、税務調査を知らせる一本の電話が鳴りました。
調査当日
調査官 「本日はよろしくお願いいたします。Aさんの通帳を見せていただけますでしょうか」
Aさんの妻(以下、納税者) 「こちらになります。本人名義の通帳はこちらがすべてです。すべて漏れなく申告しています。過去の通帳もこのようにまとめて保存していますので、どうぞ」
調査官 「ありがとうございました。過去のものまできっちり整理していらっしゃるのですね。拝見させていただきます」
納税者 「はい。主人はとても几帳面な正確できっちり資産管理していましたので」
調査官 「そうでしたか。ところで、このまとまった出金がお亡くなりになる直前までありますね。過去の通帳をみるかぎり10年前からもあったようですが、こちらはどのような用途に使われていたのですか」
納税者 「それは……生活費とかです」
調査官 「随分と大きな生活費ですね。詳しく教えていただけますか」
納税者 「そういえば、その他には株式などの投資にも使っていました。株式も申告しています」
調査官 「はい。確認しています。Aさんは株式投資をされていましたから毎年確定申告をされていましたね。そのときの財産債務調書も確認できています。こちらに記載されている投資金額と引出金額を考えてみてもどうも多いように思うのですがね」
実はAさん夫婦はセミリタイアを目標にしたときから、タンス預金をしていたのです。
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