7-9月期GDPの評価と先行きのポイント
インドネシア経済はコロナ禍からの経済活動の正常化により2022年は成長率が前年比+5.31%(2021年:同3.70%増)と上昇したが、昨年10-12月期以降は鈍化傾向にある。
今回発表されたGDP統計では2023年7-9月期の実質GDP成長率が前年同期比+4.94%となり、過去2年間で最も低い水準となった。
7-9月期は世界貿易の低迷と一次産品価格の下落により輸出の縮小が続き、成長ペースが鈍化した。
財貨輸出(前年同期比▲6.91%)は今年1-3月期まで一次産品主導の輸出ブームによって好調に推移していたが、その後は石炭やパーム油など主力輸出品の価格下落や世界的な需要の低迷により落ち込んでいる。
サービス輸出(同+43.14%)はインバウンド需要の回復により大幅な増加が続いているが、財輸出の落ち込みを相殺するには至らなかった。
インドネシアでは昨年3月以降、入国規制が段階的に緩和され、外国人旅行者数は今年9月に前年比53%増の107万人となり、コロナ禍前の約8割の水準まで回復したが、足元の回復の動きは鈍ってきている(図表3)。
輸出の縮小が続くなか、内需は堅調に推移した。まずGDPの半分以上を占める民間消費(同+5.06%)は好調だった前期の同+5.22%から小幅に鈍化したが、堅調な伸びを維持した。
昨年のコロナ規制の緩和に伴うサービス消費の拡大が続いており、消費者行動は依然として活発な状況にあるとみられる。今年6月にはジョコ大統領が新型コロナウイルス感染症についてパンデミック状態からエンデミックに移行したと宣言、感染対策として適用していた国内外での移動や大規模イベント、公共施設でのマスク着用義務が廃止されている。
また足元でインフレ圧力が後退したことも消費の拡大に繋がったとみられる。7-9月期の消費者物価上昇率は前年同期比+2.9%と、インドネシア中銀の物価目標(+2~4%)の中央値まで低下している(図表4)。もっとも金融引き締め策は民間消費の重石となっている。
インドネシア中銀は昨年8月から今年1月にかけて金融引き締めを行った後、金融政策を据え置いていたが、今年10月には通貨ルピアの安定を重視して追加利上げ(+0.25%)を実施している。
投資(前年同期比+5.77%)は機械・設備投資が減少したものの、建設投資の増加が上回り2四半期連続で加速した。新首都「ヌサンタラ」では民間企業の開発事業が相次いで着工しており、建設投資を押し上げたとみられる。
先行きは、当面の世界貿易の低迷と一次産品価格の下落による輸出の縮小やインドネシア中銀の金融引き締めにより景気に下押し圧力がかかるだろうが、インフレ鈍化による消費者の購買力の増加を受けて個人消費が堅調に推移することや新首都開発の建設投資の拡大などにより5%前後の成長軌道を保つだろう。
また来年2月には大統領選挙を控えており、今後は選挙関連支出によるGDPの押し上げが見込まれる。足元では米国の利上げサイクル終了観測が高まっており、インドネシア中銀は当面金利を据え置くとみられるが、ルピア安への警戒感から高金利が長期化して成長が抑制される状況は続きそうだ。
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