(写真はイメージです/PIXTA)

9月短観では、大企業製造業・非製造業ともに景況感の改善が示されました。しかしながら中小企業の景況感は横ばい圏に留まり、大企業との格差が際立つ結果に。このような景況感の変化にはどのような背景があるのでしょうか。本稿ではニッセイ基礎研究所の上野剛志氏が、9月短観をもとに、景況感の見通しについて分析します。

3.需給・価格判断:海外需給が緩和、中小の値上げ圧力は高止まりへ

(需給判断:海外で需給が緩和、先行きは小動き)

国内製商品・サービス需給判断DI(需要超過-供給超過)は、大企業製造業で前回から横ばい、非製造業で1ポイント上昇と小動きに。

 

一方、大企業製造業の海外需給判断DIは4ポイント低下している。中国をはじめとする海外経済の回復の遅れが背景にあるとみられる。

 

先行きの需給については、製造業、非製造業の国内需給がそれぞれ2ポイント上昇、横ばいとなっており、需給の大幅な変化は想定されていない。

 

また、製造業の海外需給も2ポイントの上昇に留まっている。利上げに伴う欧米需要の悪化や中国経済の減速、国内での値上げの悪影響などへの懸念が抑制要因になっているとみられる。

 

(価格判断:販売価格の上昇圧力は鈍化方向だが、中小企業は高止まりへ)

大企業製造業の仕入価格判断DI(上昇-下落)は前回から4ポイント低下の48、非製造業は1ポイント低下の43となった。依然としてDIの水準は高いものの、輸入物価の前年割れを受けて、仕入価格の上昇圧力は後退している。

 

また、販売価格判断DIは製造業で2ポイント低下の32、非製造業では1ポイント低下の27となった。仕入価格の上昇圧力がやや後退したことを受けて販売価格引き上げの動きもやや鈍化している。

 

製造業では、仕入価格判断DIの下落幅が販売価格判断DIの下落幅をやや上回った結果、差し引きであるマージン(採算)は足元でやや改善している。

 

仕入価格判断DIの3か月後の先行きは大企業製造業で6ポイント、非製造業で1ポイントの低下が見込まれている。既往の輸入物価下落の波及が見込まれているとみられる。

 

また、販売価格判断DIの3ヵ月後の先行きは、大企業製造業で6ポイントの低下、非製造業で1ポイントの低下となっている。製造業・非製造業ともに仕入価格の上昇圧力が和らぐ分、販売価格の上昇圧力も和らぐ見通しとなっている。

 

ただし、中小企業の様相はやや異なる。仕入価格判断DIの先行きが製造業で4ポイント、非製造業で2ポイント低下している一方で、販売価格判断DIの先行きは製造業で横ばい、非製造業で2ポイント上昇することが見込まれている。

 

中小企業ではこれまで仕入価格上昇の販売価格への転嫁が遅れ、マージンが圧迫されてきた影響とみられるが、販売価格引き上げの勢いを維持する方針が示されている。

 

なお、価格判断と関連して、企業の物価見通し(全規模)は引き続き高止まりしている。

 

具体的には、1年後が前年比2.5%(前回比▲0.1%pt)、3年後が2.2%(前回から横ばい)、5年後が2.1%(前回から横ばい)と、それぞれ日銀の物価目標である2%を上回った状況が維持されている。

 

実際の物価上昇率が、鈍化傾向にあるとはいえ、未だ2%を大きく上回る水準で推移していることが作用しているとみられ、今後の企業の価格・賃金設定への影響が注目される。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月2日に公開したレポートを転載したものです。

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