日本の住宅資産残高と変動要因
内閣府「国民経済計算年次推計」によれば、2022年末時点の日本の住宅(建物のみ)の総額は472兆円余となっている。現行の系列で遡れる1993年末時点の残高は367兆円余であり、29年間で105兆円増加した。しかし、この間に建設された住宅の投資累計額は685兆円に上り、367兆円にこの金額を足すと1052兆円となる。つまり、1052兆円―472兆円=580兆円が消えた計算となる*1。
足元では建設資材や人件費の高騰で住宅価格も上昇しているが、そのような価格変動の影響は105兆円であり、580兆円+105兆円=685兆円が固定資本減耗となる。この間、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、住宅が倒壊する等して滅失した額が6兆円余あるが、これを除いた679兆円は主に経年減価、すなわち、建物が年を経て劣化して価値が下がった分であり、住宅投資の累計額685兆円と拮抗する水準となっている(図表1)。
アメリカの住宅資産残高と変動要因
アメリカでは、1993年末の住宅ストックは6.48兆ドル、1994年から2022年にかけて17.75兆ドルの住宅投資が行われ、2022年末の住宅ストックは32.69兆ドルと、1993年末の残高に住宅投資の累計額を足した水準よりも高くなっている。この間、減価償却により10.78兆ドル減っているが、インフレ等により19.24兆ドル増えている(図表2)。
インフレ率の違いによる価格変動の影響を除いたベースで比較しても、1993年から2022年にかけてアメリカが2.05倍になっているのに対し、日本は1.05倍であり、経年減価による滅失が日本でいかに大きいかがわかる。
滅失住宅の平均築後年数・住宅の築後経過年数別残存価値
日本の住宅は木造が中心だからと思われるかもしれないが、アメリカの住宅も木造が基本であり、2009~2023年に竣工した戸建て住宅の91.7%を占めている*2。にもかかわらず、滅失住宅の平均築後年数を見ると、アメリカの55.0年に対し日本はは38.2年となっている(図表3)。これでも格差が縮小してきた方で、かつては日本の住宅の平均寿命は26年でアメリカの半分以下、などとも言われた。日本でも100年住宅、200年住宅と言われるように、新築住宅の物理的な耐用年数は大きく伸びている。しかし、国民経済計算上の木造住宅の実効償却率は0.055となっており*3、0.0114のアメリカ*4よりも早く償却される 。実際の市場での取引データもほぼこれに準じている(図表4)。
市場データベースでは築後30年を超えたあたりから建物の価値がマイナスになっているが、これは取り壊し費用の方が大きいことを意味している。実際、首都圏では相続等で比較的大きな住宅が売却される場合、そのままでは価格が高く購入者を見つけることが困難な場合が多いことから、物理的には使用可能であっても建物を取り壊して敷地を2分割、3分割して宅地を売る、あるいは建売住宅を販売するといった取引がよく見られる。
アメリカでは、住宅について古いから壊す、ではなく、手入れして長持ちさせることを是とする空気があり、維持管理の状況はインスペクション*5に反映され、中古住宅価格にも影響する。
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