(写真はイメージです/PIXTA)

「婚期は女性の話題である」というのは大きな誤解で、統計的にみると女性を上回る数の男性が結婚に至らないまま50歳を迎えています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏が3つの統計データを分析し、「未婚化社会」拡大の原因について解説します。

1―50歳時未婚割合、男性は28%へ

婚期の話となると女性の話であり、男性はいくつになっても結婚できると誤解している人が少なくない。しかし、統計的にみると女性よりもはるかに多くの男性が結婚に至っていない(図表1)。

 

 

2020年の国勢調査の結果からは、50歳時未婚割合(45歳から54歳の婚歴がない人口割合)が男性は28%に達する結果となり、18%の女性よりも10ポイントも高い割合となった。

 

50歳時未婚の彼らが30歳前後だったおよそ20年前、2002年の社会保障人口問題研究所「第12回出生動向基本調査」によれば、当時18歳から34歳だった未婚男女の結婚意志は男性87%、女性88%となっており、若い頃の結婚意志に男女差はない。

 

それにも関わらず男性の方が女性よりも結婚希望が叶うことなく50歳を迎えている割合が高いという結果である。

 

なぜこのような男性の結婚希望がより叶わぬ結果となっているのか、その原因を示唆する統計データを3点、解説したい。

2―男性の結婚は難しくないという社会の誤解

現在の50歳前後の人口(以下、現アラフィフ人口)は1970年前後の出生である。

 

1970年当時の50歳時未婚割合は男性1.7%、女性3.3%で、50歳時に結婚歴がない人口割合は男性で50人に1人、女性で30人に1人程度という、今から考えれば驚異的な成婚可能社会であった。

 

ゆえに、現アラフィフ人口の親世代は自らの経験に基づいて、結婚しない、できない、といった状況を想起することが困難であり、自らの子ども世代も「いつかは自分のように結婚するだろう」程度に考えても仕方がない時代を生きてきた。

 

筆者を含めた現アラフィフ人口自身も、親をはじめ周囲から特に結婚をプッシュされなくとも、親のようにいつかは結婚できるだろうと考えていた層が大半だっただろう。

 

彼らが20歳代になった1990年あたりでも、50歳時未婚割合はまだ男性5.6%、女性4.9%であり、中年世代では20人に1人程度しか未婚者がいない社会であった。

 

そのような時代に20歳代であった男女が、30年後の日本においてこれほどまでの高い未婚割合になると予想することは難しかっただろう。

 

ただ、このような時代背景から「いずれは親世代のように自分も結婚するだろう」と結婚を甘く考えたのは、男女ともに同じであったにもかかわらず、なぜ男性の未婚化の方が進んでいるのだろうか。

 

現アラフィフ人口が出生したあたりの1970年の人口動態をみると、40歳以上人口と40歳未満の人口割合が3:7と若者が圧倒的に多い社会であった1。その理由は、1970年において45歳以上の人口はすべて成人で第2次世界大戦を経験しているからである。

 

大きな戦争経験を通じて、日本ではとくに戦地に赴いた男性人口の欠損が発生し、現アラフィフ人口の祖父母世代の結婚では戦争による「女性余り」感覚を引き起こした。

 

また親世代の結婚が多発した1970年代は、雇用機会均等法も育児休業法(現行の育児介護休業法)もなかったので、経済力を握る男性が、必然的に女性を選べる立場にあった。

 

こうして戦争経験者の祖父母世代、雇用関連法の整備前の親世代の結婚から「男性の方が結婚しやすいだろう」「男性が選ぶ立場にある」というイメージが日本においては長く強く定着してきた歴史があり、いまだにそう思い込んでいる者も少なくない。

 

しかし、世界大戦後70年以上が経過した今、日本の人口動態から大戦による男性の人口欠損の痕跡は完全に消え去った。ヒトという生物は元来男性の方が5%多く出生するため、60歳代にいたるまで同世代人口においては常に若干の男性余りが発生している2

 

数で言うならば、女性が選ぶ立場にある。したがって、レッドオーシャンであるはずの男性が、のんびりと構えて選ぶ立場を示してしまうと、早い年齢から引く手あまたにある女性側は、あえてそのような男性を選ばずに選ぶ立場でどんどん成婚していく。

 

大戦がもたらした女性余りの感覚は10年ほど前でも婚活に関する意見で筆者がしばしば耳にしたものであるが、男性の未婚化解消には逆風となる厄介な誤解であった。

 


1 2020年の国勢調査結果では40歳以上人口と40歳未満の人口割合が6:4。

2 特に医療先進国ほど男性余りのままとなる。

 

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次ページ3―男性の結婚適齢期は女性より長いという誤解

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月2日に公開したレポートを転載したものです。

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