(※写真はイメージです/PIXTA)

相続に向けて「証券口座はこのまま持っておくべきなのか?」という疑問を抱える方がいる一方で、実は多くの人が、そもそも自身が証券口座を持っているかどうかすら知らない状況にあります。本稿では、一般社団法人証券相続普及協会・代表理事である小林裕氏が、70歳を目前にした自営業・男性のケースをもとに、相続や終活における適切な証券口座の取り扱い方法を解説します。

証券口座についてやっておきたい3ステップ

終活を始めるシニア層の方の中には「証券口座をこのまま持っておくべきだろうか?」と悩んでいる方もいるかもしれません。

 

一方で、「親が証券口座を保有しているかどうか知らない」という状況がよく見られるようになっています。これは、核家族化が進んでいるためであり、今後ますます進むと考えられています。

 

私は証券業界で15年間、資産運用のアドバイスをしながら、終活カウンセラー1級と上級相続診断士の資格を活かし、証券口座の終活と相続のサポートを行っています。これまでにシニア層のお客様1000名以上を担当してきた経験から、証券口座について、終活に向けてやっておきたい3つについて、事例を交えながらお伝えします。

 

1.証券口座は一つにまとめましょう

 

2.証券口座の認知症対策としてラップサービスは効果的?

 

3.証券口座の相続手続きは事前の遺言作成がおすすめ

娘からの現実的な手紙…

武雄さん(仮名)が私の元に相談の電話をしてきたのは、猛暑日が続く真夏のことでした。「突然ご連絡してしまい申し訳ありません」と、少し不安そうに電話をかけてきた武雄さんの話を、私はまず聞くことにしました。

 

「私の資産計画について相談したくて……」と切り出した武雄さんに、私は直接お会いしてお話を聞きたいと思い、後日、私の事務所にて武雄さんのお話を改めて聞くことになりました。

 

話を聞くと、武雄さんは自営業で40年間働き続けてきたそう。「今年で70歳になるのですが、周りからの勧めもあり、仕事を引退しようと決めました」。

 

「引退をすると家族に話したタイミングで、娘が手紙をくれたんです。そこには『お父さん、今までご苦労さまでした。お客様の幸せのために、従業員の幸せために働いてきた姿は、私達家族にとって誇りでした』そんな嬉しい言葉をもらった一方で、『ps.友達が相続税で大変だったという話を聞いて不安に思ったので、お父さんも対策を考えてもらえると嬉しいな』という、娘らしい現実的な話も書いてありました」と少し笑いまじりで話をしてくれました。

 

「愛する娘からの手紙で現実を叩きつけられたことで、相続のこともそうだけど、家族に迷惑をかけないためにも自分が人生を全うできる資金計画を立てなければいけないと思い、急に不安になりました」と、不安そうな表情を見せる武雄さん。

次ページ 「このままだと相続税はかなりなものになりそうですね」

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