(※写真はイメージです/PIXTA)

相続に向けて「証券口座はこのまま持っておくべきなのか?」という疑問を抱える方がいる一方で、実は多くの人が、そもそも自身が証券口座を持っているかどうかすら知らない状況にあります。本稿では、一般社団法人証券相続普及協会・代表理事である小林裕氏が、70歳を目前にした自営業・男性のケースをもとに、相続や終活における適切な証券口座の取り扱い方法を解説します。

金融資産だけで2億円あることが発覚

まずは武雄さんに、一体どれくらいの資産があるのか、資産状況を尋ねました。調べると、自宅・店舗用不動産・有価証券・現金などが武雄さん名義であり、奥様が数年前に他界して以降、すべての資産が武雄さんに集中している状況で、金融資産だけでも2億円あることがわかりました。

 

「このままだと、相続税はかなりなものになりそうですね」と私が話すと、武雄さんは「相続税も迷惑をかけないようにと思っているのですが、私としては自分の余生は大丈夫かどうかが一番心配に思っているのが本音です」とお話しされました。

 

そこで、武雄さんの不安を解消するために、直近の生活水準を聞き、具体的に数値化してみることにしました。

 

「実は70歳になってから老後の時間を大切にしたいと思い、家族での思い出作りに旅行したり、ずっとやりたいと思っていたギターや社交ダンスを初めました」と、様々なものに出費をしていて、比較的生活水準は高めでしたが、特段問題になるようなことではありませんでした。

 

「このくらいの生活水準であれば、生涯困ることはないでしょう」と私が話すと、武雄さんは少しほっとしたような表情を見せました。

 

ですが、話を進めていくと、「もしかして早い段階で有料老人ホームに入る可能性なども考慮すると、できるだけ資産は増やしておきたい」という考えをお持ちでした。

 

武雄さんは有価証券については、証券会社や銀行など10以上の金融機関で保有しており、銘柄数も国内株式・海外株式・投資信託・国内債券など50銘柄を超えています。

 

「複数の証券を持っているのですが、何が何だかもうわからない状況でして…」と話す武雄さんに、私は証券口座の生前整理を提案しました。これは、複数ある証券口座を一つにまとめることです。

 

以前は会社や担当者によって情報格差が大きく、取扱商品も大きく異なったため、複数で証券口座を持つことは効果的でした。しかし、今では情報はほとんど平等で、取扱商品もネット証券を使えばほとんど差が無くなり、特殊な取引をしたい場合を除いて、証券口座が複数あっても意味がない状況になりました。

 

さらにまとめることによって、損益通算も自動化されるため、今まで確定申告して税金を還付してもらっていたのを自動的に計算してくれるようになるのは手間が省けることになると思い、提案しました。

 

武雄さんは「確かにどこに何があるか全然把握していなかったからそうしてもらえると助かります」と笑顔でお答えくださり、早速インターネット証券の楽天証券1社にまとめることにしました。

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