(※写真はイメージです/PIXTA)

相続に向けて「証券口座はこのまま持っておくべきなのか?」という疑問を抱える方がいる一方で、実は多くの人が、そもそも自身が証券口座を持っているかどうかすら知らない状況にあります。本稿では、一般社団法人証券相続普及協会・代表理事である小林裕氏が、70歳を目前にした自営業・男性のケースをもとに、相続や終活における適切な証券口座の取り扱い方法を解説します。

発覚した投資信託の「偏り」

実際、保有している投資信託を詳しく調査してみると、それまで気づかなかった偏りが明らかになりました。確かに、投資信託の銘柄はいくつかありましたが、その中で名前こそ異なるものの似たような米国株式インデックス型の投資信託が多く、また、他の多くのシニアの富裕層が保有するような多様な資産とは異なり、株式型投信ばかりが目立ちました。この状況を踏まえ、リスク耐性を考慮すると、投資信託の構成を再評価する必要性を感じました。

 

このことを話すと武雄さんからも「さすがにこれでリーマンショックみたいなことが起きたら怖いですよね」とのことで、株式型投信を楽ラップや米ドル建て社債に見直すことにしました。

 

※楽ラップとは、楽天証券が提供している資産運用のことをいいます。楽ラップは口座凍結リスクにも非常に効果的な商品です。

 

楽ラップのような投資一任契約を「ファンドラップサービス」と言います。投資家のリスク許容度に合わせたポートフォリオに基づき運用を行うため、投資家が許容できるリスクの範囲内でリターンを追求するサービスのことで、資金を預けておくだけで投資先の選定などをプロがやってくれます。契約時に武雄さんと楽天証券の間で投資一任契約を結ぶことで、商品の選定からリバランスまで全て自動化されます。

 

そのため、仮に武雄さんが認知症になってもリバランスは継続され、さらに相続となると投資一任契約は解除され、楽ラップは自動的に解約されます。これにより、預かり金(証券口座内の現金)として相続手続きが可能となり、現金であれば、遺産分割も容易になります。「認知症になったらどうなるのだろうと心配していましたが、これなら安心ですね」と武雄さんは安心した表情を見せました。

 

あとは全体的なバランスに配慮しながら、生命保険を使った非課税枠の活用や不動産の小口化商品を使って相続税評価額の引き下げなどを総合的にアドバイスができる専門家チームをつくり、武雄さんのペースに合わせて総合的にサポートすることになりました。最初はご自身の老後が心配と言っていた武雄さんも、見通しがついてくると残されたご家族のために何ができるかが少しずつ考えられるようになってきました。

 

実は、証券口座は相続が発生すると口座全体がロックされてしまい、名義変更後でなければ売買ができなくなってしまいます。そのようなことを無くすためにも、できる限り事前に家族で話し合うこと、そして遺言と付言を書いておくことでスムーズに相続手続きができるようになります。

 

私と武雄さんは早速、遺言書と付言を書くことに決め、武雄さんは私の事務所を後にしました。

娘に宛てた遺言書と付言

少し暑さも落ち着いた秋の始まりの頃、再び武雄さんが私の事務所に現れました。手には娘さんに宛てた遺言書と付言がありました。

 

「娘へ。この間は手紙をありがとう。父さんのことをそんな風に見ていてくれたとは知らなくて嬉しかったです。私はただ、お前とお前の未来の子供達が少しでも生活しやすくなればと思い、ここまで頑張ってきました。これからも長生きをして孫と楽しい時間を一緒に過ごせれば嬉しいです」と書かれていました。

 

後日、武雄さんから私宛に手紙が届きました。

 

手紙には「先日書いた遺言書と付言を娘に渡しました。すると、娘は目に涙をためながら『お父さんありがとう。孫の成長を見守ってもらいたいから孫とお酒が飲めるくらい長生きしてね』と話してくれました」と書かれていました。

 

 

一般社団法人証券相続普及協会・代表理事

小林 裕

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