バブル期真っ只中に野村証券入社、翌年バブルがまさかの崩壊
渡部 恐らくは、私が長期投資について深く考えるようになったのは、私の野村證券への入社年度が非常に関係していると思うんです。私は1990年の入社で、内定が1989年なんですよ。
澤上 バブル(※)のピークだね。
(※)バブル期は一般的に、1986年11月~1991年2月~5月頃までと言われている
渡部 ピークなんですよ。一番景気が良くて、一番給料がいいというところで証券界に入ってしまった。ところが入ったあとすぐにバブルが弾け、結局そこから20年間で日経平均は8割下がっていったんですよ。
その間に何を見たかというと、山一證券が潰れ、日本長期信用銀行が潰れた姿。いわゆる“安全”といわれていたものがなくなり、代わりにファーストリテイリングが出てきてソフトバンクが出てきてニトリが出てきて、これらの株価がみんな100倍以上、上がった。私はこれを実際に体験しています。
ですから、私の少し上の先輩は、どちらかというと大型の優良株ばかりを勧め、中小型株みたいなのは駄目だという言い方をする。でも、私はまったく逆で、この体験から、新興企業で、先々いい会社は大きく伸びるという考えが、もう実務として身についている。それが我々の世代の特徴です。
【長期投資の鉄則】株価の大暴落期こそ、儲けるチャンス
澤上 俺が投資運用の業界に入ったのは1970年の頭だから、ニクソン・ショックも体験した。今回のインフレは、40年、50年ぶりにようやくきたかという感じ。
渡部 その体験は、ぜひ聞いてみたいですね。
澤上 面白いねえ。いつ、どこに入ったかで考え方は変わってくる。たまたま渡部さんは、野村證券に入って、自分はキャピタルグループのヨーロッパ本部(スイス・キャピタル・インターナショナル)、長期投資の権化みたいなところに入った。だから俺は業界に入った時から、長期投資なんよ。
それでもニクソン・ショックの時には、「ぶええっ! 大変なことになったな」と言ったら、先輩たちは平気な顔をして、いろいろな株を買っていたのね。
その時には、俺も、「なんでこんな時に株を買えるのか?」と思っていたけれども、結局、キャピタルはすごく儲かったという結果が出ている。
だから、もう第一次、第二次石油ショックなんかは俺も平気なもので、「買えばいいだろう。儲かるだろう」と買った。もちろん、それ以前に、しっかりとリサーチをしておいて、こういう時があったらこれとこれを買うぞと、だいたい決めとくわけね。その買い銘柄リストを常にブラッシュアップしとけばいいのよ。本当に長期で持てる、いけるという確信があるものを選んでおいて、大きなショック安があったら買いに出るわけ。
ニクソン・ショックで、マスコミ的に見たら大変な事態になっているのに、みんなが「なんで、この人たちは、こんなに暴落している時に株を買っているのか理解できない」と思っている真っ最中に、先輩たちは平静そのもので買っていた。俺は、そういうのを見て、そっからスタートしているから、長期投資が身に染みついている。
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