「文化は最大の長期投資」その心は…
渡部 「さわかみ投信」では、現在、平城京跡や姫路城、清水寺、二条城でのオペラ公演など、新しい文化イベントをつくられています。それはどうしてですか?
澤上 だって、文化というのは最大の長期投資なのよ。これは本当にそうなの。
たとえばオリエンタルランドにディズニーのお城があるじゃない。きれいな夢みたいなお城。あのお城のモデルになったのが、ドイツ・バイエルンにあるノイシュヴァンシュタイン城なの。
これをつくったのはルードヴィヒ2世。「狂王」と言われていた。国民にとって最悪の王様だった。結局、彼は2メートル近い大男だったのに、1メートル20センチの湖で溺死したわけよ。あり得ない。理由はわからないんだけど、40歳で死んじゃったわけ。
だけど、彼はノイシュヴァンシュタイン城をつくり、有名な音楽家ワーグナーを育てたわけ。ドイツでは、ノイシュヴァンシュタイン城やロマンティック街道、ミュンヘンは、毎年兆単位の観光収入を稼ぐわけ。
渡部 結果、大きな功績を残したわけですね。
澤上 多い年は5兆円。百何十年経っても、毎年よ。
これはもう、すごい長期投資だよね。もっとすごいのはフィレンツェ。フィレンツェではよく知られているように、メディチ家。コジモ・デ・メディチ。彼がすごいのは、メディチ家は当時世界最大の商人で、たっぷりと金を稼いで、それでもって、ミケランジェロラファエロ、ボッティチェッリ、ダ・ヴィンチ、みんな育てたわけね。
彼が金をうんとつかってフィレンツェは栄えたんだけれども、そのために画材商などの商工業者もお陰様で儲かった。だから、彼らは「俺たちも何かしないといけない」とみんなでお金を出し合って、つくったのがドゥオーモ。みんなでつくり、それを皮切りに、フィレンツェのあちこちで立派な建造物を次々と建てていった。
それでもって、華の都、フィレンツェが生まれたわけ。そして600年以上経った今でも、ものすごい観光客を呼んでいるわけ。600年続く長期投資なんよ。すごいよね。
渡部 本物の長期投資には夢とロマンがあるということですね。
澤上 文化はすごい産業、長期投資。
徳島における長期投資による地域活性化の事例
渡部 徳島の企業の社長から、澤上さんが徳島に来られる話をよく聞きます。
澤上 徳島も最初は地域活性化で、いろいろ手伝っていた。一番本気で情熱の固まりが、先ほども紹介した地元の証券会社の社長。
「地元を元気にさせるには、地元の人々に儲けてもらう証券会社にならないといけんね」と言って、それまでの商売を180度転換させてしまった。
つまり、手数料稼ぎの商品取り扱いは全面ストップさせ、長期の株式投資オンリーの証券会社に一変させた。結果、6年間ずっと赤字だが、意気軒高で頑張っている。