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他行が受け取ったお金は必ず銀行間市場で貸し付けられるのか?

前節を読まれて、「他行が受け取った準備預金を、銀行間市場で貸し付けず、自分たちの融資で創出する預金見合いの準備預金として中央銀行に積んだままにすればどうなるのか?」と思われたかもしれません。

 

こうした場合においても、先と同様に、自行の側で準備預金不足が生じ、銀行間市場の金利が上昇しますので、中央銀行が買いオペによって市中銀行に準備預金を供給します。

 

もちろん、前節までで見たように、そもそも銀行は好きなだけ融資をし、あとから中央銀行に必要な準備預金を供給してもらえればよいので、本節の設問のように「受け取った準備預金を銀行間市場では貸し付けずに、自分たちが必要な準備預金として積んだままにしよう」などと考える必要は本来ありません。

Aさんが預金を引き出したらどうするのか?

3.現金引き出しの場合

もうひとつ、思いつく例を考えましょう。融資を受けたAさんが100万円を現金で引き出したらどうなるかです。

 

ふつうなら、Aさんが100万円を現金で引き出したとしてもやはりなにかを買うはずで、購入代金として100万円を受け取った人や企業が、①どこの銀行でもすぐに預金すれば、100万円は銀行システムに戻ってきて銀行間市場で借りられます。

 

あるいは、②Aさんから100万円を受け取った人や企業が現金で保持したり、③Aさんが100万円の一部や全部を使わずに現金として保持したりすれば、Aさんに融資した銀行はやはり、(融資債権を担保に)中央銀行から準備預金を借りてくることで、現金の引き出しや準備預金の不足を埋め合わせることができます。

いくらでも融資できるなら…「歯止め」をかけるワケは

このように、たしかに市中銀行は準備預金の調達や預金準備率を気にせず、いくらでも融資を実行することができます。

 

しかし、「融資=個人の消費や企業の設備投資」なので、融資が増えると景気が過熱して物価に上昇圧力が生じますし、逆に融資が減ると景気が冷え込んで物価に下落圧力が生じます。物価の安定を図るのが中央銀行の役割ですから、中央銀行は融資≒マネーサプライをコントロールすべく努める必要があります。

 

市中銀行にとっての融資判断や、家計や企業にとっての資金調達判断には、今後の景気や融資、投資の収益に影響を与える金利の見通しがきわめて重要です。

 

そこで、この翌日物市場に中央銀行が介入をします。市中銀行が使える準備預金の量が多いときには銀行間金利に低下圧力がかかるために売りオペで準備預金を吸収することで金利を目標水準まで引き上げ、足りないときには銀行間金利に上昇圧力がかかるために目標水準の金利で買いオペを実施し、準備預金を供給します。

 

翌日物金利を目標水準に誘導することで、中央銀行は、市中銀行による融資≒マネーサプライを目標とする物価目標と整合性のある水準に保とうと努めています。これが(かつての)金融政策です。

 

ただし、現在では、中央銀行の量的金融緩和・QEによって、準備預金が増えているために準備預金に付利をすることで(→FRBの場合には付利が受けられない主体に対してリバース・レポを提供することで)政策金利(=日米の場合には、翌日物の無担保銀行間金利)の誘導に努めています。

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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