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第2次トランプ政権を前に“マールアラーゴ合意”が話題

最近の金融市場は、いくつかの不安要素を抱えているようです。たとえば、

 

・トランプ政権の通商政策(輸入関税の引き上げ)

・米大手巨大テクノロジー企業による人工知能(AI)関連の設備投資

・米国の景気動向

・円金利の上昇:引き締めによる短期金利の上昇か、緩和継続による長期金利の上昇

・ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが株式保有を減らしていること

 

などです。

 

本記事では、最初の点に関連する点を考えてみます。

 

トランプ政権の通商政策(輸入関税の引き上げ)に関してよくいわれるのは、「トランプ氏は、貿易相手国から何らかの利益を得るために関税引き上げやその脅しを用いており、あくまでディール(取引)が成立するまでの一時的なものである」というものです。

 

たとえば、第1期のトランプ政権であれば、「中国が米国製品の輸入拡大を約束する」、「日本が(米国も互いに)関税を引き下げる・撤廃する」といったことがありました。

 

他方で、第2期のトランプ政権の関税政策については、

 

●1期目に得たものよりもはるかに大きい「獲物」を狙っているのではないか

 

●国によっては、米国からの高関税賦課が恒久的に続くのではないか

 

●世界の分断がいっそう進むのではないか

 

といったことも考慮しておく必要がありそうです。

 

そして、こうした、いわば懸念の中心的な役割を担うのが、最近の世界の金融市場で話題になっている「マールアラーゴ合意」です。以下に見ていきましょう。

【Q1】「合意」の前に。そもそも「マールアラーゴ」とは?

マールアラーゴは、ドナルド・トランプ氏が米フロリダ州に持つ邸宅のことです。ウィキペディアによれば、この邸宅は、1924年から1927年にかけてフロリダの商人が建設したもので、1万平方メートルの敷地に126の部屋があるそうです。トランプ氏は1985年に、この邸宅を商人の遺族が運営する財団から購入したそうです。

【Q2】「マールアラーゴ合意」とは?

マールアラーゴ合意は、(トランプ大統領によって米経済諮問委員会(CEA)の次期委員長に指名されている)スティーブン・ミラン氏(米国の資産運用会社のストラテジスト)が2024年11月に書いた論文のなかで示した、新たな多国間通貨合意の枠組みのことです。

 

後述の【Q4】で触れるように、この論文の最も重要なポイントは、準備通貨の供給と安全保障を一体不可分のものとして考える点です。

 

話を戻すと、過去の多国間の通貨/外国為替相場制度に関する取り決めは、ブレトン・ウッズ合意やスミソニアン合意、プラザ合意、ルーブル合意など、避暑地や博物館、ホテル、宮殿などのリゾート地で取り交わされており、マールアラーゴ合意はこれらに倣って名づけられています。

 

マールアラーゴ合意とは、具体的には、

 

1.外国の通貨当局が保有する外貨準備の大半売却による新たなドル安調整と、

 

2.金利上昇を抑制するための方策:外国の通貨当局が外貨準備として最小限残す短期の米国債を100年物割引国債と交換する、

 

3.政策協調への参加を促すための方策の組み合わせ:(1)輸入関税の賦課、(2)「安全保障の傘」からの除外、【論文からの筆者による外挿ですが】(2)FRBが提供するドル・スワップラインからの除外、

 

を指します*。

 

なお、ミラン氏は論文のなかで、「政策協調によるドル安調整」だけでなく、「米国単独によるドル安調整」も検討しています。

 

具体的には、

 

1.外国の通貨当局が保有する外貨準備の売却を促すために(なおかつ、「安全保障の傘」の過去と将来のコストを同盟国にも負担させるために)、米国債の支払い利息から「手数料」を徴収する(→ミラン氏は言及していないものの、筆者が補足すれば、手数料徴収を進めれば利付債は割引債になる)。

 

2.(外国の通貨当局がこれまで行ってきたように)FRBに外国為替市場での外貨買い・ドル売りの不胎化/非不胎化介入を依頼する。

 

3.金利上昇を抑制するための米国債の買い入れ(→補足すれば、新型コロナ・パンデミック以降の量的金融緩和・QE局面のように、リバース・レポ・ファシリティを使ってQEによる流動性拡大の影響を相殺することもできる)

 

*最初にミラン氏に代わって強調しておくと、(1)ミラン氏が論文のなかで示しているのは、「米国の通貨当局はこうすべき。これが効果あり」という確信に満ちた政策提言ではなく、あくまで、「こうしたこともできるかもしれない」という、様々なツールを提示する思考実験として捉えられるべきものです。付け加えれば、(2)ミラン氏は自身の論文について個人の考えであり、トランプ次期政権(当時)のものではないことを強調しています。したがい、本稿もトランプ政権が必ずしもミラン氏のアイデアと同様に考え、また同様に行動するわけではない点にご留意ください。
 

 

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