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銀行が有価証券投資を行う「2つのタイミング」

1.新発国債の買い入れ

今回は、銀行にとって融資と並んでもうひとつの柱である「有価証券投資」がどう行われるのかを確認します。

 

その1例目として、政府が国債を「増発」し、これを銀行が買うことで、銀行システム全体がネットで国債保有を増やす場合を考えます※1

 

政府は、政府預金口座に集めた資金を「ただ眺める」ために国債を増発するわけではありません。受け取ったお金は財政支出として使われます。ここでは「1兆円分の国民への給付金支給」を考えます。

 

まず、銀行は財務省から入札で国債を買い入れます。具体的には、国債の購入代金1兆円が市中銀行準備預金口座から出金され、政府預金口座に振り替えられます。

 

国債代金支払い時の市中銀行:
【資産・借方】国債1兆円
【負債・貸方】市中銀行準備預金1兆円

 

市中銀行にとってみると、自行の準備預金口座から国債の購入代金1兆円が引き落とされますが、とはいえ、銀行は出金分1兆円の資金を同口座に用意しておく必要はありません。なぜなら、国債の発行代金は政府によって即座に給付金として使われ、国民の銀行口座に預金として振り込まれるためです。

 

国民が給付金を受け取るときの市中銀行:
【資産】市中銀行準備預金1兆円
【負債】顧客預金1兆円

 

すなわち、銀行は、給付金として国民の銀行口座に振り込まれた「お金」(準備預金)を元手に国債を買えばよいのです※2。もちろん、厳密には数日の誤差は出ます。その過程で国債を買うための準備預金が不足する場合には(金利が急騰しますので)中央銀行は準備預金を供給し、国民の銀行口座に給付金が振り込まれるまで「つなぎ」ます。

 

結果として、政府が財政支出を行い、その財源を国債発行でまかない、なおかつ銀行がその国債を購入する際には、「市中銀行:【資産】国債1兆円、【負債】顧客預金1兆円」として記帳されます。融資のときと同じ形式です。

 

また、これによって、銀行は顧客口座に預金を記帳=創出しますから、融資と同様(→預金準備率10%とする)、銀行は顧客預金の10%である1,000億円分の準備預金を積み必要が生じます。このとき、銀行は、買ったばかりの国債の一部を中央銀行に担保として持ち込み、準備預金を調達して所要準備を積みます。

 

市中銀行:
【資産】国債9,000億円&市中銀行準備預金1,000億円
【負債】顧客預金1兆円

 

※1 銀行が新発の株式や社債、リートなどの金融資産を銀行が取得する場合を考えても、お金を受け取った創業者や企業はその資金で、①なにかを買うか、②とりあえず預金するか、③借入を返済するか、しますから、やはりそれらの金融資産の取得代金は誰かの顧客預金として銀行システムに戻ってきます。銀行はその資金を充てれば、これらの金融資産を購入できます。

 

※2 国債が「増発」ではなく、「借り換え」の場合には、同じタイミングで償還される国債があるはずですから、銀行は既発債の償還で入ってくるお金をそのまま借換債の購入に充てられます。逆に、政府にとってみると、借換債の発行で入ってくるお金をそのまま既発債の償還資金に充てられます。

 

結果として、銀行にとって借換債の買い入れ資金は不要ですし、政府にとって既発債の償還資金は不要です。

 

「元金はそうでも利金はどうか」と思われるかもしれません。政府は財政赤字ですから、利金の支払いを補う税収は存在しません。したがって、利金の支払い分は「増発」と考えられます。

 

市中銀行:
【資産】国債x億円
【負債】顧客預金x億円

 

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