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事例で考える…Aさんが預金を引き出したらどうするのか?

1.自行付け替えの場合

話を「Aさんへの融資100万円」に戻すと、Aさんは預金通帳に記載された100万円を「ただ眺める」ためお金を借り入れたわけではありません。たとえば住宅や自動車など、「なにかを買うために融資を受けた」はずです。

 

よって、融資によって受け取った預金(100万円)はその直後にAさんがなにかを買うことによって、Aさんの口座から引き落とされます。

 

ここで、①Aさんが融資されたお金を支払った先(B社とする;たとえば、建築メーカーや自動車メーカーなど)が、Aさんと同じ銀行に決済口座を持っていれば、Aさんに融資を実行した銀行は、Aさんの自行内口座からBさんの自行内口座に預金100万円を「付け替え記帳」すればよいだけで、お金は銀行からは出ていきません。

 

自行内での記帳で済みますから、やはり銀行はいくらでも気にせずに融資を実行できます。

 

2.他行送金の場合

他方で、②B社が他行に決済口座に開いている場合には、自行から他行への送金が必要になります。実際には「送金」は、自行と他行がともに中央銀行に開いている準備預金口座間の振替として実行されます。

 

このときたしかに、自行は「他行に送金するためのお金(100万円)」が必要です。言い換えれば、Aさんへの「融資」は残りますが、Aさんへの「顧客預金」は取り消して、他行に送金するための準備預金が必要です。

 

でも実際には、自行がAさんに融資を実行したときには「ペン1本」で「預金100万円」と書き入れただけで、他行に送るための準備預金はありません。

 

どうすればよいか? 銀行間で「いってこい」のやりとりを行います。

 

送金を受ける他行側を考えると、(自行とは逆に)「【資産】市中銀行準備預金100万円、【負債】顧客預金100万円」というかたちで「お金」が増えます。

 

Aさんに融資を実行した自行は、その日の終わりまでに、送金を受け取った他行からその100万円を「銀行間借入」として調達すれば、お金は「いってこい」となり、資金の過不足は生じません。

 

自行にとってみると送ったお金をすぐに借り入れとして取り戻すのです(→「自行:【資産】準備預金100万円、【負債】銀行間借入100万円」、他行:【資産】銀行間貸出100万円、【負債】準備預金100万円」)。

 

話を銀行システム全体に広げると、1日の終わりには「受け取り超過」の銀行と、「支払い超過」の銀行が出てきます。

 

ただし、全銀行の資金のやりとりをネットするとゼロなので、「受け取り超過」の銀行と、「支払い超過」の銀行の間で翌日物の資金貸借を行えば、毎日帳尻が合います。よって、やはり「融資に元手・お金は必要ない」ことになります。

 

脱線すると、たしかに「支払い超過」の銀行は「受け取り超過」の銀行に対して(流出した預金に付すはずだった預金金利よりも通常は高い)銀行間金利を支払う必要があります。

 

しかし、毎日多くの銀行が多くの融資や返済、振替を実行するなかで、ある日はたまたま他行送金が多くて「支払い超過」となり、別の日はその逆で「受け取り超過」となることをランダムに経験することで、金利の「受け払い」は無視できると考えられます。

 

話を戻すと、このように、銀行システム全体を考えれば、融資によって創造された預金は、銀行システムのなかに留まりますから、「お金」が「外」に出ることはありませんし、他行に移った資金は他行から借りてくればよいので、銀行はやはりいくらでも融資が可能です。

 

こうした1日の終わり時点での帳尻を合わせるための資金貸借が行われるのが翌日物の無担保市場であり、米国ではフェデラルファンド市場、日本ではコール市場と呼ばれます。

 

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