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地方銀行の貸出金が増えているが…

先日、次のような記事が目に入りました。日本国内の地方銀行の貸出金が増えているという記事です。いわく、

 

「(中略)(地方銀行は)融資に頼らざるをえない事情もある。預金は右肩上がりで増え続け、400兆円に迫る。これまで預金で集まった余剰資金を有価証券で運用してきたが、世界的な金利上昇で含み損が増加し、以前のような外債頼みの運用姿勢は取りにくくなった。ある大手証券アナリストは『債券運用にあててきた余剰資金を融資に回さざるを得なくなっている。今後も貸出金の増加は続く』とみる。(後略)」

 

筆者はこの記事を読んで、「貸出金が増加すれば、その分だけまた預金は増えるのだが……」と思いました。

 

本稿では、市中銀行がどのようにして、融資および有価証券投資を行っているかを確認しつつ、ターゲットである市中銀行準備預金についていくつかのポイントに触れていきます。

銀行の融資に「元手」はいらない

銀行が融資を実行するときには「元手(お金)」はいりません。融資は「ペン1本」で実行できます。銀行が融資を行う際には、融資をする相手(=Aさんとする)に自行に口座を開いてもらったうえで、Aさんの預金通帳に「預金100万円」と書き込むだけ、これで完了です。

 

念のため、家計にとっての会計仕訳は「【資産】預金100万円、【負債】借入100万円」です。他方の銀行側ではこの逆ですから「【資産】融資100万円、【負債】顧客預金100万円」です。融資によって預金が生み出されました。これが信用創造です。預金は市中銀行が唯一生み出せる主体です。「預金が引き出されたらどうなるのか?」と思われたかもしれませんが、それについて次節以降で考えます。

 

脱線すると、筆者がこれを知ったのは『現代の金融入門(新版)』(池尾和人著)でした。それまではマクロ経済学の教科書の「銀行が受け入れた本源的預金の一部を貸出に回し、その貸出は誰かの預金として戻ってくるから、またその一部を貸出に回して……」という説明になじんでいただけに、「お金を貸すのにお金・元手はいらないの!?」と驚いた記憶があります。

 

その後、筆者は、銀行で顧客企業との金利スワップの決済事務を担当したとき、この事実を経験しました。

 

顧客企業(事業法人)の「勝ち」(=ネット受け取り)のときは送金せずに顧客の自行内当座預金口座にクレジットするだけです。逆に銀行の「勝ち」のときには顧客の同口座から出金します。

 

それまでは外国証券の決済業務をやっていたので、「支払いはどこかに送金するのが当たり前」と思っていました。

 

話を戻すと、以上から、①融資と預金は同時に生じること、そして、②銀行は望むだけの融資と預金を(同時に)作り出せることがわかります。地方銀行が融資を増やせば、預金はますます増えることになります。

 

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