「短期国債大量発行」で「リバース・レポ」減少か
今回の「短期国債大量発行」の金融市場への影響についてコメントしますと、多額の短期国債発行(政府預金の増加)の見合いは、おもに「リバース・レポの減少」として生じ、「市中銀行準備預金の減少」は「リバース・レポの減少」よりも小規模にとどまると考えています。
(補足すると)今年1月に米連邦政府が債務上限に達して以降、米国債の新規発行は償還の範囲に留められていました。
FRBのリバース・レポは、(政府と中銀の)統合政府が発行する「1日物の超短期国債」であり、債務上限到達以降は、FRBが財務省に代わって「1日物の超短期国債」を(リバース・レポのかたちで)発行してきました。
今後は、財務省が短期国債を発行することで、リバース・レポに預けられている資金の一部は短期国債に振り替えられるとみられます。そうでなければ、短期国債の利回りが魅力的な水準に上昇して、リバース・レポ金利との(準)裁定機会が生じ、(やはり)短期国債に資金がシフトするでしょう。
(本旨に戻って)仮に、「市中銀行準備預金の減少」が「リバース・レポの減少」と同額と想定しても、準備預金残高・GDP比は2018年半ばころの水準(9.7~9.8%程度)にとどまり、(銀行間金利のストレスがピークに達した)2019年秋の水準(6.8%)と比べ、依然高水準です。
そうした点では、銀行間金利にストレスが生じるのはもう少し先とみられます(→少なくとも財務省が今回、TGAに残高を積んだあと)。
市中銀行準備預金減少…MMFにシフトへ
他方で、あらためてこれまでの実績を振り返ると、市中銀行準備預金は、「量的引き締め(QT)によるバランスシートの縮小」を大幅に超えるスピードで減少しています。
[図表1]に示すとおり、市中銀行準備預金はピークの2021年12月から9,674億ドル減少しており、そのうち、量的引き締め(QT;バランスシートの縮小)=「中央銀行による意図した・政策的引き締め」で説明できる部分は3,667億ドルにすぎず、5,801億ドルはリバース・レポへの振り替えです。
簡単にいえば、市中銀行にとっての顧客預金が引き出され、MMFにシフトしている模様です。
そして、[図表2]に示すとおり、その背景は「政策金利と比べて大幅に低い市中銀行預金金利」によるものとみられます。