「市中銀行準備預金」は、銀行の「資産」であり「負債」
ここにさっそく、本稿のターゲットである「市中銀行準備預金」が登場します。
「中央銀行」が「銀行の銀行」と呼ばれるように、「市中銀行準備預金」は「銀行のための預金口座」であり、市中銀行が中央銀行に開いている決済口座です。銀行間の資金のやりとりはこの「市中銀行準備預金」を通じて実行されます。
念のため、「市中銀行準備預金」は市中銀行にとっての【資産】であり、同時に中央銀行にとっての【負債】です。日本の場合は「日銀当座預金」と呼ばれます。
最近では中央銀行の量的金融緩和・QEによって多額の準備預金が存在しているために、形骸化しつつありますが、多くの国では、銀行が創出した顧客預金の何%かを「市中銀行準備預金」として中央銀行に積む必要があります(→この比率は「預金準備率」や「法定準備率」と呼ばれます)。
融資の満期は数年先であるため、それまでの預金の引き出しに備え、市中銀行の資産に一定の流動性を確保するための方策です。
前節では、市中銀行が(顧客である家計や企業に)「融資」と「顧客預金」を同時に創出する信用創造をみました。それは中央銀行にとっても同じです。中央銀行も(顧客である市中銀行に)「融資」と「準備預金」を同時に創出します。
準備預金を創出できるのは唯一、中央銀行
たとえば、今年3月以降の銀行危機でみられたように、連邦準備制度理事会(FRB)が市中銀行に対して、(市中銀行が保有する国債を担保に)1億ドルの融資を行えば、市中銀行にとっての会計仕訳は「【資産】準備預金1億ドル、【負債】連銀借入1億ドル」です。
他方のFRB側ではこの逆ですから「【資産】連銀貸出1億ドル、【負債】準備預金1億ドル」といった具合です。先ほどの融資と同じ形式です。
またもうひとつ重要な例として、FRBが量的金融緩和・QEで市中銀行から国債を買い取れば、銀行は「国債」という【資産】を落とす代わりに「市中銀行準備預金」という【資産】を計上します。よって、市中銀行のバランスシートの規模は維持されます)。
対するFRBの側では「【資産】国債1億ドル、【負債】市中銀行準備預金1億ドル」となり、中央銀行のバランスシートは拡大します。
重要な点として、「預金を創出できるのは唯一、市中銀行」であるのと同様、「準備預金を創出できるのは唯一、中央銀行」です。
別途、家計や企業が銀行から預金を「現金として引き出す」ことに備えるべく、市中銀行は準備預金を「現金として引き出す」ことができます。現金の発行もまた、基本的には中央銀行が唯一の担い手です(→ただし、硬貨は日米ともに政府が発行しています)。