写真提供:一級建築士事務所MUK 写真:西 恭利

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回のテーマは「太陽光発電」。最近、高性能な住まいとセットに語られることが多くなっていますが、実際はどうなのでしょうか。住まいづくりのプロによる解説です。

太陽光パネル設置の前に、まずは確保したい住宅の「躯体性能」

「高性能住宅」を建てる上で、比較的意見が分かれるのが太陽光発電についてです。高気密・高断熱の住宅の建築を考えている方からも、新築やフルリノベーション時に太陽光発電を搭載するべきか否か迷われて、アドバイスを求められることが多くなっています。そこで「太陽光発電」について少し深堀して説明していきます。

 

まず、太陽光発電を載せるべきかどうかを考える上で、その判断の前提から触れていきます。これまでも「高性能住宅」とは何かについて、様々な視点から取り上げてきましたが、住宅を新築する際にもっとも重視するべきなのは「躯体性能」です。住宅性能を決める要素としては、大雑把に分けると、「躯体性能」と「設備性能」に分けることができます。日本人は、不思議なことに、設備がとても好きな傾向があります。しかしながら設備というのは概ね15年程度で更新期を迎えます。つまり35年間の住宅ローンを組むとすると、支払いが半分も終わらないうちに設備部分は価値がゼロになってしまうのです。

 

それに対して、躯体はもちろん経年劣化はありますが、35年はもちろん、60年以上、場合によっては100年以上にわたり程度の性能を維持することができます。つまり、本来新築時に、躯体と設備のどちらを重視すべきなのかについては議論の余地はないはずです。一定以上の躯体性能を確保した上で、はじめて設備による省エネ性能向上を検討するというのが正しい予算配分と言えるのです。

「躯体性能」とは、耐震・断熱・気密・耐久性

では、躯体性能とは、具体的にはどのような要素から構成されるのでしょう?

 

今までの連載でご説明してきたことなのですが、基本的には次の4つの要素から構成されます。

 

◆耐震性能:大地震にも強いこと

(関連記事:『【住宅の耐震性能の基礎知識】安心して住み続けるためには耐震等級3の確保が重要なワケ』

◆断熱性能:冬暖かく、夏涼しく快適であること

(関連記事:『日本の住宅の断熱性能、今後大幅に基準が厳しくなる! 国の政策アプローチから探る』

◆気密性能:隙間風がはいらないこと

(関連記事:『日本の住宅に不可欠な「気密性能」だが…住宅メーカーが〈見て見ぬふり〉をするワケ』

◆耐久性能:長寿命かつメンテナンスコストがかからないこと

(関連記事:『恐ろしい…EUの禁止農薬が使われる「日本のシロアリ対策」驚愕の実態』

 

高性能住宅を名乗るのならば、耐震性能は耐震等級3、断熱性能は断熱性能等級6以上、気密性能はC値1.0以下(できれば0.5以下)、劣化対策は劣化対策等級3(できれば永続性能のある防蟻処理+アメリカカンザイシロアリ対策)を確保したいところです(関連記事:『外来シロアリに食い潰される!「日本の木造の家」全滅の危機』)。

 

そして、今回のテーマの「太陽光発電」は、当然設備に含まれます。ですから、上記の躯体性能を確保した上で、はじめて導入の検討をするのが正しい順番と言えるのです。

 

その前提の上で、太陽光発電について説明していきます。

 

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