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貧困家庭の子どもを「食」で支援
――「グッドごはん」を開始された背景について教えてください。
グッドネーバーズ・ジャパンは2004年から海外の開発途上国の子どもを対象にした支援をメーンに活動してきましたが、2017年ごろから徐々にメディアでの報道もされ始めたように、子どもの7人に1人が貧困という国内の問題も見逃せないほど深刻化していたため、生きていくうえで大本となる「食」の支援から始めようと「グッドごはん」に着手しました。
現在は月に1回、決まった場所で米や調味料など約1万円相当の食品を無償配付しています。首都圏・近畿圏・九州の3拠点で毎月計5000世帯近くを支援している状況です。寄付は個人や一般企業から募っており、内容は「お金の寄付」、「食品の寄付」、「時間の寄付」。活動に共感していただいている個人の継続スポンサーからの寄付が多く、寄付というと富裕層の方が多いイメージもあるかもしれませんが、それだけでなく若い会社員の方や、なかにはひとり親家庭で苦労して育った方、数年前まで生活保護を受けていた方……とさまざまな方に支えられています。
【参考ページ】食の支援について知る
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支援を必要とする「ひとり親」への周知に課題
――「グッドごはん」を続けるなかで難しさを感じることはありますか?
グッドごはんを利用したい方は毎月増え続けていますが、必要な量の食品や運営資金の確保は常に課題です。最近の物価高や夏の米不足など、思うように食品調達ができないこともよくあり、希望する方全員に配るためにスタッフが奔走しています。
また、食品を受け取りたい方への周知も簡単ではありません。自治体の窓口や子ども食堂にチラシを置いてもらうなどして広報しているのですが、困っている人ほど情報へのアクセスが難しいケースが多いんです。そうした人はダブルワーク、トリプルワークで忙しかったりするので、情報収集するゆとりもありません。届けたい人たちにどのように「グッドごはん」を知ってもらえるか、常に考えています。
最初に受け取りに来られたほとんどの方が「こんなにもらえるんですか」といってくださいますし、「いろいろな人が自分たちを支えてくれている」という事実がなによりもうれしいという声も聞きます。「1人で頑張るしかないと思っていたけれど応援してくれる人がいるんだ」という事実が力になるのだと思います。
――公式サイトに掲載されている利用者インタビューでも「ずっとひとりぼっちだと思っていたけれど、そうじゃなかったんだ」と高校生の息子が気づいた、という話がありましたね。
食品支援は、初めは困窮家庭の子どものお腹を満たせれば……と思っていたんですが、その他の効果もいろいろあったんだと気づきました。心の支えになったり、お腹がいっぱいになることで勉強に集中できたり、いろいろなところに波及しているのだと感じています。
――最もやりがいを感じるのは、やはりそのような喜びの声を聞いたときでしょうか?
はい、それに尽きると思います。対面で食品をお渡ししているので、受け取られる方と直接、会うことができますから。ちょっと恥ずかしがる方や、さっと帰られる方もいますが、目を見て「ありがとうございました」と言ってくださる方も多いですね。
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「グッドごはん」は必要な応急処置……新たな形の支援も模索
――「グッドごはん」は現在、全国で5,000世帯を支援しています。これほどまでに必要とされている社会的背景についてはどのように捉えていますか?
利用者のうち96%が女性でシングルマザーなので、やはり女性の非正規雇用や所得格差の問題は確実に背景にあり、切り離して考えることはできません。一家の大黒柱であるにも関わらず、半分以上の利用者は非正規労働者。年収も各種手当を含めて200万円未満の人がおよそ6割です。所得と就労の問題と子どもの貧困はかなり密接に関わっているのではないでしょうか。
我々は食品の支援で貧困問題が解決するとは思っておらず、「グッドごはん」は支援のきっかけであり、あくまで「応急処置」だと思っています。ですが、応急処置も必要。何事もお腹が空いていると活動できませんし、「すべては食べることから始まる」と考えているので、応急処置であってもまず止血をしないといけません。そういった面で「グッドごはん」は必要な活動だと思っています。
ただ、子どもの貧困問題の解決のためには、他の形の支援も必要です。たとえば学習、住居、養育費の問題……他にも何かできることがあるのではないかと常に考えています。
――では、今後は食品の無償配付以外の形での支援も行われる可能性があるのでしょうか?
今は「体験の提供」を少しずつ始めています。「グッドごはん」の利用者向けの施策で、夏には成田空港の見学ツアーを開催したり、冬にはクリスマス会を開催したり、と連携してくださる企業と一緒にイベントを行っています。夏休みにどこにも行けず、絵日記に何を書いていいか困っている子どもたちもいますが、家族でのお出かけやイベントなどの体験は贅沢品ではなく子どもの成長にとって必要なこと。体験の機会を提供し、自分の「興味」や「得意」を見つけるきっかけを提供できればと思います。
――最後に、改めて子どもの貧困問題解決に携わる当事者としての思いやメッセージをお聞かせください。
今は少子化問題が深刻で、私が11年前に出産した時は子どもの年間出生数が100万人を切ったとニュースになりましたが、2024年の出生数は70万人割れと予想されています。 国の宝である子どもの数がここまで減っている現実のなかで、家庭の経済環境で選択肢が狭められ、日本の未来を背負っていく子どもたちが適切な食事や機会を与えられないまま、諦めるという経験を積み重ねながら育ってしまうと、彼らが大人になったときの社会はどの様なものになるでしょうか。
すべての子どもたちが将来への希望を持つ、来る社会の担い手となれるよう、今の社会全体で困窮家庭に目を向け、貧困問題の改善に取り組んでいくことが求められます。
中学を卒業して就職せざるを得ない環境に置かれている子どもたちが、進学して自分自身の能力や可能性を磨き、社会に還元し生き生きと働ければ、それは日本にとってもプラスになること。子どもにフォーカスした支援をすることは、その子どもだけではなく日本、ひいては世界の安定・成長に繋がると思いますし、そういう環境を作ることが大人の責任ではないかと思っています。
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