売電価格が安くなった現在、太陽光発電のうまみは増している⁉
太陽光発電の売電価格は、毎年下がり続けています。戸建住宅の屋根に搭載するのは、一般的には10kw未満ですが、2012年は42円/kWh 、2015年度は33円/kWhだったのが、2023年度は16円/kWhまで下がっています(図表1)。
この売電価格の推移のみを見て、太陽光発電はすでに儲からないと思っている人が多いようです。
まず、太陽光発電の売電制度について、最初に整理します。太陽光発電でつくった電気は家庭で消費して余った分を売ることで、売電収入を得ることができます。この時の「電気がいくらで売れるか」を「売電価格」と言います。単位は、〔円/kWh〕です。
10kW未満の住宅用太陽光発電では、売電を開始してから10年間は固定の売電価格で電気を売る事ができます。この決まった金額で電気が売れる制度を「固定価格買取制度(FIT)」といいます。10年間は同じ金額で電気を買い取ってもらえるため、収支の見通しが立てやすく手堅い投資として、太陽光発電を導入する人が多いのです。
では、売電価格が以前の半額以下になった現在では、投資としてのうまみはなくなっているのでしょうか?
実はそうではありません。「固定価格買取制度(FIT)」とは、
当初高い売電価格を設定
→太陽光発電の導入が増える
→量産によって研究開発の進展と量販効果で価格が下がる
→経済メリットが出やすくなるので売電価格を下げる
というサイクルで、「一定の経済メリット」が出るようにしながら、売電価格が順次下げられているのです。
ではこの売電価格はどのように決められているのでしょうか?
国は、毎年、太陽光発電の設置や維持にかかるコストの下落を踏まえながら、想定IRR(内部収益率)が3.2%となるように売電価格を決定しています。「IRR」は概ね「利回り」と同じようなものと考えてもらっても差し支えありません。
太陽光発電を設置したほとんどの住宅は国の想定以上に発電
でも、実際に国の想定どおり発電するのかと疑問を抱く人もいるでしょう。福岡市に本社を置くエコワークス株式会社というとても有名な工務店があります。同社は自然素材・高気密・高断熱等の高性能に加えて、約97%の施主が太陽光発電を載せているというZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及にとても積極的に取り組んでいる会社です。同社では、太陽光発電の設置は施主にメリットが大きいということから、施主に根拠を示しながら説明することで、ほとんどの施主が太陽光発電を載せるそうです。
同社の小山社長によると、太陽光発電を載せた施主のほとんどの家で、当初の想定以上の発電をしており、十分な収益を上げているということです。
また、一般社団法人日本エネルギーパス協会代表理事の今泉太爾氏が2012年から2022年までの12年間について、国の調達価格算定委員会の資料のシミュレーションに基づき、経済合理性について計算しています。その結果、売電価格が42円/kWhだった2012年に設置した場合の投資回収率が123%であったのに対して、17円/kWhの2022年は128%とむしろ投資回収率が上がっているという計算結果が示されています。今泉氏は、これについてとてもわかりやすい動画を公開しています。
つまり、売電価格が下がったので太陽光発電は儲からないというのは、大きな誤解と言えるのです。
太陽光発電の収益性を高める→ポイントは自家消費率の向上
売電価格は16円/kWhまで下がっていますが、一方で電力会社から購入する電力単価の上昇が続いています。電力料金は、基本料金と従量料金(燃料費調整額を含む)から構成されるのでkWhあたりの単価は個々の条件に異なりますが、たとえば2023年7月の東京電力の平均モデル(従量電灯B・30A、使用電力量260kWh/月の場合)に基づく電力単価は、28.4円/kWh(激変緩和措置反映前の電力単価は36.6円/kWh)です。
そのため、太陽光発電による売電価格よりも夜間等に東京電力から買電している電力単価の方がはるかに高額です。つまり電気代の支出を抑える、もしくは太陽光発電の収益性を高めるのならば、太陽光発電による電気をより自宅で消費し、なるべく電力会社からの買電を減らした方が得ということになります。これを「自家消費率の向上」といいます。太陽光発電を載せるのならば、この「自家消費率の向上」がポイントになります。
【図表2】のオレンジ色の点線部分が示すように、太陽光発電は昼間しか発電しません。一方、青の薄い点線のように電力の消費は昼間だけではありません。そのため、朝・夕や夜間は太陽光発電の発電量よりも使用する電力量の方が多いため、電力会社から買電することになります。この薄い点線で示す電力消費をなるべく太陽光が発電する昼間にシフトすることを「自家消費量の向上」と言います。
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