(※画像はイメージです/PIXTA)

足元の米ドル/円相場は、植田新総裁が初めて出席した4月28日(日)の日銀金融政策決定会合を受けて、大幅な円安が進みました。この動きは5月も継続し、昨年のような「1ドル140円台」で推移する円安相場が再来するのか、それとも、この流れは一時的な「行き過ぎ」なのか……マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が、さまざまなデータを紐解きながら予想します。

5月の注目点=FOMC後の米金利の動向が焦点

さて、そんな米金利の行方に大きく影響しそうなイベント、FOMC(米連邦公開市場委員会)が早速今週予定されています。これを受けた米金利の見通しが、5月の米ドル/円の行方を考えるうえでも最大の焦点と言えるでしょう。

 

5月FOMCでは、今のところ0.25%の利上げ予想が一般的なところといえそうです。このところ発表された米景気指標は予想より弱いものが増えており、さらに、SVBショックに続いて米ファースト銀行の破綻が注目されるなど、金融システム不安もくすぶっています。

 

一方で、いまだインフレ懸念も残っていることから、FOMCは5月については利上げを続け、焦点は6月以降について利上げ打ち止めを示唆するかといったところでしょう。

 

米ドル/円への影響という観点からは、そんなFOMCの結果などを受けて、米金利がどう動くかが最大の焦点になります。

 

米金利は、テクニカルに見ると重大な岐路に差し掛かっている可能性があります。金融政策を反映する米2年債利回りも、長期金利の米10年債利回りも、ともにトレンド転換の目安になる52週MA近辺での推移が続いているからです(図表7、8参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表7]米2年債利回りと52週MA(1995年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表8]米10年債利回りと52週MA(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

経験的には、米金利上昇トレンドが続いており、金利の低下はあくまで一時的と言うことなら52週MA前後までがせいぜい。逆に52週MAを大きく下回るようなら、既に米金利低下へトレンド転換した可能性が高まります。

 

米ドル/円は、そんな米金利の影響を強く受けるので、その意味では米金利次第で米ドル/円の当面の行方が決まる可能性もあるでしょう。

 

以上をまとめてみます。日銀会合の米ドル高・円安は「行き過ぎ」の懸念があるため、米ドル高・円安は、140円の大台には届かず、年初来の米ドル高値137円前後で限界を確認する可能性が高いのではないでしょうか。

 

一方で、FOMCを受けて米金利低下の目先的な限界が確認されるようなら、米ドル/円の下落リスクにも限界があると考えます。以上を踏まえると、5月の米ドル/円予想レンジは132~139円で想定したいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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