日本企業に正社員として紹介されているインドからの優秀なIT人材たち

少子・高齢化に伴う労働力人口の減少を受けて、人手不足が深刻さを増している。新型コロナウイルスの感染拡大が一服し、国内外が「アフターコロナ」の経済を模索する中、企業間の優秀な人材の獲得競争はさらに激しくなりそうだ。外国人人材のマッチング事業などを手掛ける全研本社は日本企業の経営者などを対象にIT人材についてのアンケートを実施した。第六回目は、同社の田中志穂・ダイバーシティ事業部シニアマネジャーが、日本企業が現在、抱えているIT人材に関する課題について解説する。

 

全研本社が実施した日本企業の経営者を対象としたアンケート調査によると、IT(情報通信)人材が社内に「いない」と回答した人が7割にのぼった。国内の人材不足などを受けて、多くの企業がIT人材を確保できていない状況が浮き彫りとなった。

 

少子・高齢化による労働力不足を背景に、日本企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)などを通じた業務効率化を進めようとしている。しかし、経済産業省によると2030年には国内のIT人材が最大で79万人不足する見通し。国内の労働需給がひっ迫する中で、優秀な人材の獲得競争がさらに激しくなる可能性がある。

 

調査は全研本社が中小企業の経営者を対象に2月24~26日に実施し、200件の回答を得た。回答した企業の業種は建設業、製造、卸売・小売、不動産、サービス、情報通信、金融・保険、宿泊など。

社員をIT人材に育成するのは「難しい」が6割

アンケートでは「社内にIT人材がいるか」との質問に対して「いない」との回答が70%を占めた。一方で「いる」と答えた人は30%にとどまった。「自社のIT人材が不足していると思うか」との質問に対しては「はい」が37.5%、「どちらともいえない」が23%だった。「いいえ」との回答も39.5%あった。

 

 

「自社のIT人材が不足している」と回答した経営者に理由を聞いたところ、最も多かった回答は「社員をIT人材に育成することが難しいから」で58.7%(複数回答)にのぼった。続いて「IT人材が採用できないから」が46.7%、「国内のIT人材の絶対数が少ないから」が28%に達し、上位を占めた。「IT人材の離職数が多いから」との回答も10.7%あった。

IT人材が採用できない理由は「国内のIT人材が少ない」が最多

「IT人材が採用できない」理由について聞いたところ、最も多かった回答は「国内のIT人材の採用が少ないから」が最多で全体の45.7%を占めた。次に多かったのが「求人広告で募集をしても応募がこない」が40%にのぼった。企業が採用しようとしても、そもそも国内に人材がいないという深刻な状況が伝わってくる。「採用基準を満たしたIT人材が集まらない」(34.3%)、「スカウトサービスを使っても応募がこない」(20%)との回答も多かった。

 

 

総務省の人口推計によると、2022年10月1日時点の外国人を含む総人口は、21年10月と比べて55万6000人少ない1億2494万7000人だった。労働の担い手となる15〜64歳の「生産年齢人口」は29万6000人減の7420万8000人だった。総人口に占める割合は59.39%と過去最低に迫る水準だった。

 

戦後2つのベビーブームを受け、ピークの1995年には総人口の69.5%を占めていたが、少子高齢化に伴い、減少に転じている。企業はこれに対応しようと業務の無駄の廃止やDXをはじめとしたITを通じた業務効率化を進めようとしている。IT人材の不足はこうした日本企業の生産性向上に悪影響を及ぼすとみられる。

 

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