調査は全研本社が企業の人事・労務など採用担当者を対象に8月19~21日に実施し、200件の回答を得た。回答した企業の従業員数は500名以下が42.5%、500名超~1,000名以下が15.5%、1,000名超が42%。業種は製造業、サービス業、金融・保険、情報・通信、流通・小売業、教育・医療サービスなどだった。
意外に少ない「宗教」「在留資格」「給与」の課題
全研本社が実施したアンケート調査(複数回答)によると、すでに外国人人材を採用済みの企業では「従業員同士のコミュニケーションについて課題を抱えている」という回答が11.5%にとどまった。
企業に「採用時に最も重視したこと」について聞いたところ、最も多かった回答は「日本語力」が86.2%に達していた。しかし、外国人の従業員の日本語力がそれほど高くなくとも、一定のコミュニケーションが図れていることがわかった。現場の従業員同士がジェスチャーでものごとを伝えたり、実際に実演しながら仕事を教えたりして円滑な意思疎通を図っているとみられる。
外国人の場合、「宗教の違いから、禁止されている食材があったり、礼拝活動があったりする」として採用に消極的になる企業も多い。しかし、実際に外国人を採用している企業で「宗教への理解」を課題にあげた人事担当者は10.3%に過ぎなかった。
外国人を採用する際によくあげられるのが「在留資格」に関する懸念だ。一方で外国人を採用済みの企業からは「在留資格に合わせた業務しか任せられない」「在留資格により滞在期間が限られている」ことを課題としてあげた企業はそれぞれ8%に過ぎなかった。
「離職・失踪などの心配」との回答も9.2%と1割に満たなかった。「給与水準」や「休暇の取り方」もそれぞれ1割程度の回答にとどまった。外国人を採用していない場合に課題になると懸念された問題が多くの外国人を採用済みの企業に課題になっていないことが浮き彫りとなった。
「ビジネスマナーの理解が課題」31%、「文化の違い」を超えられるかがポイント
外国人を採用済みの企業が課題としてあげたテーマで最も多かったのは「日本語力の向上」で42.5%だった。従業員同士のコミュニケーションはある程度うまくいっているとはいえ、さらなる日本語の能力を求める企業が多かった。
「ビジネスマナーの理解が課題」と答えた企業も、全体の31%と高水準だった。例えば「名刺交換」や「お辞儀」など日本と海外ではマナーが違うことがある。上司から部下への指示も具体的にしなければ、外国人にとっては意味がわからないことも多い。アンケートでは「生活習慣の違い」「社内での異文化理解」「暗黙の了解への理解」も2割程度の回答があり、比較的高い水準だった。
「採用面接で自社にマッチした人材を見抜くのが難しい」との回答も26.4%に達した。それぞれの日本の企業や業界には独特の文化があり、たとえ高い能力を持つ外国人人材でも職場になじめないケースがある。国内外の文化の違いを超えて外国人と円滑に仕事をしていけるかどうかは、「日本企業が外国人人材とコミュニケーションを取る努力をどのくらいできるのか」「日本文化に対応できる柔軟な発想の外国人人材を採用できるのか」にかかっているといえそうだ。