写真提供:永峰昌治建築設計事務所 写真:百武てつご

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回のテーマは「断熱性能」「気密性能」。高性能な住まいを考えるのであれば、絶対に必要な視点だといいます。住まいづくりのプロによる解説です。

鉄骨造は気密性能の確保が苦手

鉄骨造は、断熱性能の確保に不利である以上に、気密性能の確保に向いていません。鉄は木に比べて温度による伸び縮みが大きく、壁の中の構造も複雑であるためではないかと言われています(図表5)

 

【図表5】
【図表5】

 

少なくても、鉄骨造の大手ハウスメーカーで、気密性能を売りにしている会社は、筆者の知る限りでは存在しません。

鉄骨コンクリート造ならば、外断熱にこだわりたい

次に、鉄筋コンクリート(RC)造(以下「RC造」という)ですが、建築費が高いことが最大のデメリットです。性能面では、RC造には、外断熱工法と内断熱工法がありますが、外断熱工法であれば、高気密・高断熱に適しており、室内環境を快適に保てます。

 

外断熱工法とは、文字通り建物の外側を断熱する工法です(図表6)。コンクリートの躯体が外気の影響を受けにくく、躯体の温度が室温に追随するため、外気温による輻射熱の影響がなく、室内が快適になります。さらに躯体そのものも外気温変化や風雨から守られ、劣化しにくくなります。ただし、熱橋対策等、コストは少し割高になります。

 

【図表6】
【図表6】

 

ちなみに熱橋とは、ヒートブリッジとも呼ばれ、建物の中でも熱を伝えやすい部分で、熱を橋渡ししてしまう箇所のことを指します。RC造の場合は、バルコニーや廊下がそれにあたります。局部的に熱を伝えてしまう部分で、室内外をつなぐ部分となるため、断熱性能の低下を招きます。また結露の原因にもなり、省エネという観点からも冷暖房効率を落とす原因となり光熱費の増大を招くことになります。

 

一方の内断熱工法は、コンクリートの内側を断熱していく工法です。コンクリートの躯体は外気温の影響を受けることになりますので、室内の温度もそれに伴って変化しやすくなります。そのため、室内の温熱環境の確保に難があります。また、躯体が外気温の変化に影響を受けるとともに、風雨に晒されるため、劣化も早くなります(図表7)

 

【図表7】
【図表7】

 

ちなみに、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、フランス、デンマーク、オーストラリア、韓国といった先進国では、法律で、RC造は外断熱と定められているようです。日本では不思議なことに、RC造では、内断熱工法が圧倒的で、外断熱工法の分譲マンションは極めてまれです。

 

ただし、注文住宅をRC造で建てるのならば、外断熱工法にこだわるべきだと思います。

木造の唯一の欠点は「腐れとシロアリ被害のリスク」

最後に、木造ですが、高気密・高断熱の性能を確保しやすく、コストも高くなく、最もバランスが取れた工法になります。よほど予算に余裕があって、RC造が好きということでなければ、木造の一択だと思います。「軸組在来工法」と「木造枠組壁式(ツーバイフォー)工法」は、多少の一長一短はありますが、他の工法に比べるとその違いは大きくないと言えます。 

 

ただし、木造の唯一の欠点は、腐れとシロアリ被害のリスクです。このリスク解消ためには、しっかりとした劣化対策と防蟻処理を行うことが必要となります(関連記事:『恐ろしい…EUの禁止農薬が使われる「日本のシロアリ対策」驚愕の実態』)。また、最近は従来の防蟻処理では通用しない外来種の被害が急増していることも以前ご説明した通りですので、その点に留意した防蟻対策についても確認していただければと思います(関連記事:『外来シロアリに食い潰される!「日本の木造の家」全滅の危機』)。

 

このように、断熱・気密性能にこだわった住まいには、木造が最も適しています。断熱・気密対策をしっかりと行うことで、快適な住環境が確保できますし、コストも高くありません。ただし、劣化対策をきちんと行えば、長い期間安心して、健康・快適・省エネに住まうことが可能なのです。

 

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