社員が紹介したくなる仕組みづくり
▶リファラル採用の歴史
■リファラル採用とは
リファラル採用とは、「リファラル(紹介、推薦)×リクルーティング(採用)」の造語です。信頼できる友人・知人からの紹介を通じた採用手法が、リファラル採用の定義といえます。
2012年以降、米国においては最も人材獲得数が多い採用チャネルとなっています。企業の80%がリファラル採用の制度を導入して、実践しているのです。また、求職者の採用経路に関しても、リファラル採用が最も多いという状況になっています。
一方で、日本においても近年になって、ようやくメインの採用手法として盛り上がりを見せています。
日本の採用市場は、2008年のリーマンショック以降、有効求人倍率が右肩上がりで上昇を続けてきました。それに伴い、2010年代から採用トレンドも変化し、従来のような求人広告を出して「待つ」だけの採用手法から、企業から優秀な人材にアプローチするダイレクト・リクルーティングと呼ばれる「攻め」の採用へとシフトしてきました。
その後、Z世代の社会進出に伴いソーシャルでの情報収集が当たり前になり、より戦略的に優秀な人材を獲得する手法としてリファラル採用が着目されるようになったのです。
日本においては、2015年、我々MyRefer(現TalentX)がリファラル採用の概念を提唱しました。この時点では、多くの企業から「そもそもリファラルとは何か」「縁故採用と何が違うのか」といった声が聞かれました。
それが、現在では70%ほどの企業がリファラル採用を推進するに至っています。
とはいえ、一口に「リファラル採用」といっても、2015年当時と現在とでは、その定義が大きく変わってきていると感じます。そうしたリファラル採用の変遷を、私たちは「1.0」「2.0」「3.0」と定義して、分類しています。
■「動かす」ではなく、「動きたくなる」リファラル採用3.0
リファラル採用の「1.0」はいわゆる縁故採用です。縁故採用というのは、社長や経営幹部の近親者などが、そのつながりによって入社することを指します。古くは「コネ採用」とも呼ばれてきたものですが、戦略的に優秀な人材を獲得する手法ではありません。
「2.0」は「社員紹介採用」と呼ばれてきた、日本におけるオーソドックスなリファラル採用です。「1.0」と「2.0」の違いは、選考要素があるかどうかです。優秀な人材を獲得する戦略的な採用手法としてのリファラル採用が確立するのが、この「2.0」の段階です。
しかし、「2.0」の段階では社員をリクルーター化するために、インセンティブの制度を設けて、「なんとか動いてもらう」ということが主流となっていました。そのため、質のよい採用を行なっていくのにはどうしても限界がありました。
また、「リファラル採用はとにかくインセンティブを設定して動機付けすれば社員は動くだろう」という考え方が蔓延し、本質的な促進ができていない企業も多く散見されました。
そこで私たちが提唱しているのが、リファラル採用「3.0」です。社員をファン化して、彼らが紹介したくなる仕組みづくりから考えていくのが、「3.0」の特徴です。
会社にとっても紹介された友人・知人にとってもよい成果を生み、さらに持続可能性があるこの「3.0」の手法こそ、日本の多くの企業に重視してほしい採用手法です。
Z世代にはリアルな情報が求められるという話は前述のとおりです。
消費者は、スポンサーの広告費により強制的に動かされているタレントがおすすめる商品を信頼するでしょうか?
消費者がCMではなく、心から「この商品がいい!」という身近な人の言葉を重視するようになったのと同様に、リファラル採用においてもインセンティブで無理やり動かそうとするのではなく、「動きたくなる」仕組みを考えることが重要になったのです。これはまさに、採用においてもマーケティングの考え方が必要になった証左であり、「戦わない採用」が求められる背景といえます。